マスク着用は「推奨」から「個人の判断」へ。採用面接ではどう対応すべきか。

2023年(令和5年)3月13日からマスク着用は個人の判断に

政府は、2023年(令和5年)3月13日から、マスク着用について屋内・屋外を問わず、個人の判断に委ねることを基本とするとしました。

これまで屋外では、マスク着用は原則不要、屋内では原則着用としていましたが令和5年3月13日以降、マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました。本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、ご配慮をお願いします。

マスクの着用について – 厚生労働省

これまでは屋内での着用が「推奨」されていた

新型コロナの流行が始まった頃から、日本国内ではマスクの着用が推奨されるようになりました(正確には、屋外では原則不要、屋内では原則着用)。これまでも、マスクの着用はどのような場面でも法的な義務ではなく、政府からは「推奨」されていただけですが、ご存知の通り、この「推奨」によってあらゆる場面でマスクを着用することが事実上原則となっています  1

これまでは採用面接でのマスク着用も原則だった

新型コロナの感染拡大によって、感染リスクのないオンライン面接が急速に普及しました。また、直接対面する面接を実施する場合においては、面接官、応募者双方ともにマスクを着用することが常識、基本的なマナーとなりました。

マスク着用の効果は、自分が感染しないという効果よりも、自分から感染させないという効果の方が大きいため、マスクの着用は、万一自分が無症状感染者である場合に他者に感染させてしまうリスクを減らす行為と言え、他者への気遣いを表現するマナーともいえますが、採用面接においては人事から「マスク着用のお願い」が通知されることがほとんどでした。稀にこのような通知がない場合でも、他者への感染を防ぐマスク着用は、採用面接における新たな常識となってきたと言えます。

【過去記事参照】
面接でマスクを着用したままはダメ? ~ 新型コロナウイルスの感染予防と関連して~
就活・転職面接におけるマスクの常識(2023年版)

2023年(令和5年)3月13日以降、就活生・転職希望者の取るべき対応

上に挙げた厚生労働省の通知によれば、「マスクの着用は個人の判断が基本」であり、「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう」にすることが求められます。これを馬鹿正直に受け止めれば、採用面接におけるマスク着用は、応募者の自由であると考えることになります。

これまで政府がマスク着用を「推奨」しているという後ろ盾があったため、企業も「マスク着用のお願い」を出しやすかったということはあるでしょう。もっとも、あくまでも「推奨」なのですから、3月13日以前でも、マスク着脱を強要すること自体はできなかったわけです。ただ、新たな政府方針では「本人の意思に反してマスクの着脱を強いること」は明確にやめるように呼び掛けていますので、企業はこれまでのように一律に「マスクを着用してください」という通知を出すことも、新たに「マスクは着用しないでください」という通知を出すことも難しくなるでしょう。

恐らくは、たとえば「できればマスクを着用しないで面接に臨んで頂きたいのですが、マスクを着用したい方は着用しても構いません。マスク着用の有無は合否には影響いたしません。」といった通知が一般的になるのではないかと思われます。常識的な企業 2 は、「できれば~してほしい」が「どちらにせよ合否には関係ない」といった通知をすることが一般的だと思います。

事実上は企業の希望にそった対応をした方が有利

上記のように「個人の判断が基本」というルールで企業が対応してきたとしても、企業が通知で「できればマスクをしないで欲しい」あるいは「できればマスクをして欲しい」といった「お願い」をしてきた場合にどう対応するのかはやはり悩ましいところでしょう。

これについては、やはり企業の「お願い」にそった対応をする方が好印象を与えるだろうと思います。たとえば「マスクをしないで欲しい」という「お願い」をしてくる人事は、顔の表情が良くわかる状態で面接をしたいという希望をもっています。一方で「マスクをして欲しい」という「お願い」をしてくる人事は、感染予防を重視する姿勢をもっています。したがって、「お願い」に反する対応をする応募者に対して事実上マイナスな印象を抱く可能性は否定できません。したがって、合格・内定獲得を最優先に考えるなら、企業側の希望にそった対応をする方が有利であろうと考えられます。

しかし、自分自身、あるいは近親者等が、重症化リスクの高いような場合には、感染予防を最優先に考えたいという人もいるだろうと思います。そのような場合は、企業側の希望にかかわらずマスクを着用するという選択肢もアリです。3

したがって、原則として企業側の「お願い」にそった対応をするのが良いものの、健康上の問題などであればマスク着用するという判断もありうるというのが結論になると考えます。

逆に、企業側がマスク着用を「お願い」している場合に、応募者側があえてマスクをしない選択をする理由はほとんど考えられません。もちろんこの場合も、ご自身の主義として「マスクをしない」ということを表現したいのであればそれは可能ですが、健康上も求職活動上も特にメリットはないものと考えます。4

これまでの運用を変えない企業もそこそこあると予想

マスク着用について3月13日に政府方針が変わったからといって、企業等が直ちにこれに即応した対応をするとは限りません。他の企業や団体の対応を見ながら、つまり様子見しながら対応を決めていきたいという企業も少なくないのではないかと思われます。したがって、しばらくはマスク着用について従来のルールで進める企業も少なくないかもしれません。つまり「可能な限りマスクを着用して頂きたいと思います。ただし着用の有無は個人の判断を尊重し、合否には影響いたしません。」といった通知がしばらくは一般的になるかもしれません。

マスク着用、あるいは感染防護についての考え方は、企業によって、あるいは地域によっても異なります。したがって、企業・組織がどのような対応をしてくるのかは、応募先ごとによくチェックする必要があります。

「個人の判断」と企業側の希望をどう調整するか

マスク着用についての、日本政府の公式な見解は、「着用は個人の判断、個人の意思に反して着脱を強要してはならない」というものです。したがって、これを完全に真に受ければ、「マスクをしていようがしていなかろうが就活等に影響はない」ということになります。

しかし、社会が新型コロナウイルスの感染症を完全に克服したと言うには程遠い現状で、マスク着用についての考え方は、企業や個人によって異なり、政府が見解を出したからといって社会全体が一気にその方向に動くような状況でもありません。

したがって、就活生や転職希望者の方々は、単に「自分の判断」だけで考えるのではなく、企業側・人事の希望を理解し、無理がなければその希望に応じるような対応をするなどしていく必要があります。企業側が「希望」を表明しているのには理由があるので、やはり希望にそうように行動してくれる応募者の方が印象が良いというのは否定できないと思います。

ただ、たとえば「可能な限りマスクは着用しないでください」という指示があるような場合に、あえてマスクを着用し「個人の判断」を示すということも可能です。このような場合には、「なぜ企業側の希望にそった対応をしないのか」を自分の言葉でしっかり説明できるようにしておくことが大切です。先に述べたように、このような対応はマイナスの印象を与えるリスクはありますが、ロジカルな説明をきちんとできるのであれば、それが人事に評価される可能性もあるでしょう。

余談:面接官はマスク着用、応募者はマスクなしが良いのでは

あくまでも余談ですが、応募者の表情を見たい人事は、面接官がマスクを着用し、応募者はマスクなしという運用が穏当なのではないかと考えています。

何度も述べている通り、マスク着用は「自分が感染しない」というよりも、「まわりに感染させない」という効果が期待されるものです。したがって、面接官がマスクをして応募者への感染を防ぐというのは、未だに新型コロナ感染リスクが一定以上ある状況の下では必要なことではないかと思います。応募者の表情を見れば良いだけで、面接官の表情を見せる必要は(あまり)ないのですから、面接官はマスクをとる必要はありません。

面接官がマスクをしてくれれば、応募者は感染リスクが低い中でマスクをとることができます。もちろん、それでも応募者がマスクをしたいと希望するのであればそれを止めることはできませんが、面接官はマスク着用、応募者はマスクなし、というのは誰にとっても納得しやすい方法ではないかと思います。 5

追記:WEB面接ではマスクはしない

質問を受けることがあったので追記を。

WEB面接ではマスクをしないのが普通です。周囲に人がいないのですから、感染させるリスクも感染するリスクもありません。したがって、マスクをしているのは不自然に見えます。

WEB面接だと対面の場合に比べて、印象面のチェックをしにくいと意識している面接官もいるので、マスクをしていると表情がわからず困ると考える場合も多いと思います。マスクを外して、しっかりと表情を見せるように心がけてください。

 


  1. もっとも、たとえば航空機内など機長の強い管理権限が認められるような空間においては、その指示に従うことが必要となります(もっともマスク着用指示の有効性について疑義をはさむ人はいます)。 
  2. コンプライアンス遵守に対する姿勢において常識的という意味です。 
  3. もっとも、マスクの効果は、「感染しない」ことよりも、「感染させない」ことの方にあるので、このようなケースの場合、周囲の人たちがマスクをしているかどうかの方が重要です。 
  4. もちろん、健康上の理由からマスク着用できないという場合は除きます。 
  5. あくまでも2023年3月13日現在の感染状況等を前提にした意見です。