面接の逆質問で「特にありません」と答えるのはNGなのか。

面接の終盤で「何か質問はありますか」と問われた時どのように答えるか。いわゆる「逆質問」と言われるものですね。

この逆質問、ネット上の情報などでは「逆質問は重要!しっかり準備しよう」といった情報が溢れています。就職情報サイトから個人ブログまで、面接を扱う情報では必ずと言って良いほど「逆質問は重要」と書かれているのですが、いつからこれが常識化したのでしょうか。

しかし、私自身の感覚としては、「逆質問がそんなに重要か??」というのが率直なところです。自分自身の人事経験、人事経験のある方からお聞きした話などからも、逆質問がそんなに重要だという感触はありません。

そこで今回は、面接でなぜ「何か質問がありますか」と問われるのか、本当に逆質問は評価に大きな影響を与えるのか、逆質問対策、について書いていこうと思います。

なぜ面接で「何か質問はありますか」と問われるのか

面接官がなぜ「何か質問はありますか」と問うてくるのかについては、一概には言えません。

一般的には下記の目的が挙げられています。

  • 入社意欲や企業・組織への関心度を図るため
  • 企業・組織への認識を確かめミスマッチを防ぐ

本当にこれらが目的なのであれば、しっかりと逆質問を考えておく必要がある、ということになるでしょう。しかし、これらについては、「志望動機」「具体的に携わってみたい仕事」等の質問によって確かめるのが基本です。

私の知りうる限り、多くの人事担当者は上記のような目的ではなく、下記のような目的であることがほとんどではないかと思います。

  • 自分たちの企業・組織についての理解を深める機会にしてもらいたい

つまり、逆質問に評価を下して選考の結果を左右しようというつもりはない、ということです。

逆質問はそんなに重要なのか?

「何か質問はありますか」という問いは、ほとんど面接の最後にされます。それは、面接官が自分の質問を終わり、「ここまでこちらから一方的に質問したけど、そちらからの質問も受け付けますよ」という姿勢の表れです。

稀に、面接の機会に逆質問の時間をたっぷり取っている企業や組織があり、そのような場合は、その会話の中で評価を行っている可能性はあります。しかし、多くの企業・組織では逆質問は面接の最後に行われるものですので、さほど重視しているわけではなく、むしろざっくばらんに「質問を受け付けますよ」という姿勢を示しているものだと考えて良いのではないかと思います。

リサーチ能力が高いほど逆質問に困る

もちろん、質問したいことがあれば積極的に逆質問するのは良いことだと思います。しかし、その企業・組織への応募意欲が高く、事前にしっかりリサーチしている場合ほど、逆質問がなかなか思い付かないことも多いはずです。

事業の方向性、人材育成の方針や研修制度など、深く調べればわかることも多いため、事前調査が万全なほど質問は思い浮かばないものです。

「特にありません」でも問題はないが少しだけ味付けを

したがって、質問したいことがない場合は、率直に「特にありません」と答えても問題ないと思います。ただ、「特にありません」だけでは少しそっけないので「事前に色々と調べさせて頂き、面接でも(あるいは説明会でも)詳しく説明して頂きましたので、今のところ質問はありません。」と回答すれば良いかな、と思います。「しっかりと理解している」ということを伝えられれば良いと考えます。

こんな逆質問なら「特にありません」の方がずっといい

「逆質問をしなければならない!」というプレッシャーから、無理やり逆質問をしようとすると、NG逆質問をしてしまう可能性もあります。そこで、NGな例を少し挙げておきましょう。

  • 【NG】調べれば簡単にわかることを質問する

    企業のHPに掲載されている情報、求人情報に掲載されている内容など、簡単にわかるはずのことを質問するのはNGです。「そんなことも調べずに応募しているのか」というマイナス評価は避けられません。

    (例)
    ・御社の企業理念を教えてください。
    ・御社の強みは何ですか。
    ・どのような研修を受けられますか。
    (研修制度がHPなどに表記されている場合)

  • 【NG】待遇に関する質問をする

    応募者が本当に聞きたいのはこのあたりのことだと思いますが、仕事内容ではなく待遇面にばかり関心があるように見えるので望ましくありません。転職の場合でも、「条件交渉」の場でない限り、待遇面の話題は避けた方が良いでしょう。

    (例)
    ・昨年のボーナスは何か月分だったのでしょうか。
    ・残業はどの程度ありますか。
    ・有休は自由にとれるのでしょうか。

  • 【NG】意図のわからない質問をする

    「それを聞いてどうする?」と思われるような質問も良くありません。それを聞いたところでその企業・組織への志望度ややる気が左右されるようなものとは思えないものです。あるいは、その回答次第で「それなら入社したくないと思うの?」というような質問も、質問する意味がありません。

    (例)
    ・この会社への志望動機はなんでしたか。
    ・この会社の将来性についてどう考えていますか。

比較的使いやすい逆質問の例

さて、上記のようなNG逆質問をするぐらいなら「特にありません」とした方がマシだというお話をしてきましたが、そうは言っても「逆質問を準備しておきたい」という方も多いと思います。

そこで、比較的汎用性が高い逆質問の例を挙げておこうと思います。

  • 意欲を感じさせる逆質問
    (例)
    ・私は将来○○職を希望しておりますが、最短で何年で○○職に就いた方がいらっしゃいますか。また、その方はどのようなキャリアを経られたのでしょうか。

    ・マネージャー職になるためには、入社後配属されるポジションの業務に取り組む際にどのようなことを意識しておくべきでしょうか。

    ・入社後に研修があることは承知しておりますが、その前に自分自身で準備できることがあれば取り組んでおきたいと思います。どのようなことを準備・勉強しておけば良いでしょうか。(※ただし、この逆質問はかなり多用されているので、面接官が聞き飽きている可能性があります)

  • 面接官を気持ちよく話させる逆質問
    面接官個人の経験を聞くと、場合によって「武勇伝」を語るような雰囲気で、気持ちよく話してくれることがあります。人は、自分が気持ちよく話すと「良い会話だった」と思う傾向にあるので、うまくいけばプラスに作用する可能性はあります。ただし、面接官によっては、そっけない答えで終わる可能性もありえます。

    (例)
    ・(応募職種と同じ、または関連性の高い職種の面接官に対して)これまで扱った案件の中で最もやりがいを感じた案件はなんですか。

    ・(応募職種と同じ、または関連性の高い職種の面接官に対して)これまでで一番難しいと感じた仕事はなんですか。

したくもない質問をする必要はない

ここまで見てきたように、逆質問はネット上で言われているほど重要ではないと思います。ただ、単にそっけなく「特にありません」というよりは、「しっかり理解できており質問はないが入社意欲は強い」という意図が伝わるような表現をすべきです。

また、したくもない質問を無理やり捻出しようとすると、かえって逆効果になるリスクもあります。単なる思いつきの質問、準備不足が露呈する質問、仕事に興味がないことが伝わる質問などです。

本来、「逆質問で意欲をアピール」「仕事への関心をアピール」というのはおかしな話です。面接の様々な質問を通じて意欲はアピールできるはずですし、すべきものです。また、「採用後何をしたいのか」を明確にして話すことで、仕事への関心や意欲は十分伝えられるはずです。逆質問に悩むぐらいなら、「志望動機」や「具体的にやりたい仕事」、「過去の経験から伝えられる自分の強み」などをしっかり考えておくことに注力すべきでしょう。

それでも対策としては1つか2つの逆質問を用意しておくと安心でしょう。その上で、それまでの回答で十分アピールができたと感じるのであれば、逆質問は特にしなくても良いと気楽に考えておけば良いと思います。