面接での回答では定量的な説明を心がける。

今日は、面接の回答について、少し突っ込んだお話をしたいと思います。

面接での質問について、少し乱暴に分類すると大きく2つに分かれます。1つは、将来の仕事に関する質問、もう1つは、過去の経験に関する質問です。

将来の仕事に関する質問は、応募先で行っている事業や取り組みなどに対する一定の知識を前提に、それに対する応募者の評価軸や意欲などを確かめる質問です。

過去の経験に関する質問は、職務経験や学生時代の経験(学業、サークル、アルバイトなど)に関する質問です。これはある意味事実関係を尋ねているものであり、準備をしなくても自ずと回答は自分の中にあるはずのものです。

今日の「定量的な説明」というのは、この過去の経験に関する質問についてのことです。過去の経験は定量的に説明しましょう、ということです。

定量的とは

「定量的」を定義として説明すると「物事の様子または変化などを数字に直して分析する様子」のことです。対義語は「定性的」で、「数字では表せない性質に着目して物事を分析する様子」のことを意味しています。

少し乱暴に言うと、「定量的」というのは目に見える「数字」、たとえば「昨年比の売上1000万円UP」、「3年連続で利益率30%を達成」などと説明するので、その情報は「客観性がある」と一応感じることができます。

一方「定性的」は「数字」で表せない性質に着目して、たとえば「綿密なコミュニケーションを継続することで周囲からの信頼を勝ち取った」というのは、数字で表されておらず、どの程度のことなのかはわかりませんが、そもそも数値化するのは難しく定性的な表現にならざるをえない、ということでもあります。

定量的な説明の重要性

面接において定量的な説明が重要なのは、採用側が人材価値をできるだけ客観的に測りたいと考えているからです。

たとえば、アマゾンなどは「面接ヒント集」を公開して「定量的な説明をしましょう」と呼び掛けていました。これは単に親切だというよりも、「自分の実績について定量的な説明ができない人には応募してこないで欲しい」という姿勢の表れなのかもしれません。

たとえば、営業マンがある年度の売上について昨年よりも向上させようと考えたとき、通常は数値目標を掲げます。それは、自身の所属する部署で掲げられた予算かもしれませんが、それだけでなく、自分の仕事にその目標を落とし込んでいるのなら、自分自身の目標数値を持っている場合もあるでしょう。そのために営業強化をするといっても、「一所懸命新規開拓する」というのでは評価しずらいものです。「1日〇件はは必ず訪問する」、「1週間に〇件は見込み客を必ず確保する」などの明確な数値目標をもって取り組んでいることがわかれば、単なる精神論ではなく、結果を出すための客観的な指標を持ちながら仕事をしていることを伝えられるわけです。

新卒の学生でも、たとえば「サークルで新入生の部員獲得を頑張った」というエピソードであれば、1年前は何人入部し、目標は何人で、実績は何人であったか、など定量的に説明することは可能です。アルバイト経験などでも同様ですね。

定量的な説明だけでなく再現可能性のあるプロセスを説明する

定量的な説明は、その人の過去をある程度客観的に評価することに役立ちますが、それだけで良い評価に繋がるわけではありません。

定量的な説明とともに必要なのが「再現可能性のあるプロセスの説明」です。

たとえば、過去の営業経験である年に「前年比130%の成果を出した」と成果を定量的に表現したとします。しかし、それだけでは、その成果が上がった原因は理解できません。もしかしたら、その年の外部環境が特別に良かったのかもしれませんし、前年に大きなマイナス要因があっただけかもしれません。したがって、「130%」を達成するために、どのような取り組みを行ったのか、そのプロセスをご自身の行動によって説明する必要があります。130%を実現するに足る「行動」があったということになれば、将来も同じような成果を出せる可能性があるという判断に繋がります。

プロセスの説明では「行動」が大切

ここで大切なのは「行動」を説明するということです。決して「考え方」ではありません。

もちろん、結果を出すための行動を取るためには、その前に考えなければなりません。何が原因かを理解し、何を行えばよいかを考え、アイディアを絞ってから行動するのでしょうから、「考え方」の説明に力を割きたくなります。もちろん、採用側もこの「考え方」をある程度は知りたいでしょう。しかし、もっと知りたいのは実際に行った「行動」なのです。「考え方」は後付けで言うこともできますし、現実に合わせて後から修正して説明することもできます。しかし、「行動」は外部から客観的に見えるものなので、(たとえ自己申告だとしても)修正されていない生々しい経験であると考えられます。採用側は、あなたの頭の中を評価したいのではなく、あなたが実際にどう動く人なのかを知りたいのです。

したがって、過去の経験を説明する際には、具体的な行動をもって説明するのだと考えて下さい。

定性的な説明が不要なわけではない

ここまで定量的な説明の重要性を説いてきましたが、しかし、仕事の全てが定量的に評価できるものばかりではありません。例えば、他の仕事もしている他部署にお願いごとをして協力を得た上で、大きな成果を上げるというような場合、他部署からどうやって協力を引き出したのか、については定量的な評価にはなじまないかもしれません。

他部署の協力を求めるには、他部署の人たちが今どのような業務で忙殺されているのか、直近でどのようなことを実現したいと考えているのか、どのようなことに困っているのかなどについてまずは理解しなければならないかもしれません。その上で、その立場を理解し、共感を示しながら、その中で受け入れられるであろう提案をすることが大切かもしれません。場合によっては、先にこちらが相手の要望を飲むことによって、譲歩を引き出すようなことを行う場合もあるでしょう。

こういったプロセスを定量的に表現するのは難しく、「よく配慮する」、「よく理解する」、「密にコミュニケーションを取る」等、いわば定性的に表現せざるを得ない場合もあります。だからといって、このような説明が無意味であるわけではありません。ただ、定性的な説明は往々にして単なる「姿勢」、「考え方」の説明になってしまいがちです。注意すべきなのは、「密にコミュニケーションを取る」というのは、「どんな機会に」、「どんな手段を使って」、「どのような言葉をかけたのか」といった「行動」を表すということです。この点は、定量的な説明であれ、定性的な説明であれ共通です。

とりあえずは「数字と行動」と覚えておこう

今日のテーマはなんとなくこむずかしい話に聞こえるかもしれませんが、大事なのは面接でどう答えるかという実践面です。

その意味では、あまり細かいことにはこだわらず、「過去の経験を説明する時には、できる限り数字と行動を織り交ぜて説明しよう」と覚えておきましょう。

それだけで、面接官の反応は大きく変わります。