集団討論のコツ (グループディスカッション対策決定版)
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民間企業への就活での選考プロセスでも、公務員試験(特に地方自治体)の2次試験・3次試験等でも、集団討論が課されることは多くあります。名称は、「集団討論」、「グループディスカッション」が一般的ですが、時に「グループワーク」という名称でも実質的には集団討論と同じ内容の場合もあります。以下の説明では「集団討論」という名称で統一して説明します。 1
ゼミなどでディスカッションしたことのある人は多いだろうと思いますが、「選考」としてディスカッションを行うことに慣れている人はほとんどいません。そこで、今日は集団討論のコツを書いていこうと思います。 2
大切なことは、「集団討論では何を評価されているのか」を理解して、当日どのような姿勢で臨むのかをしっかりと決めておくことです。
意見の優劣よりもチームへの貢献が大切
集団討論で勘違いしがちなのは、いかに「良い意見」を言えるかが大切だと考えてしまうことです。確かに、良い意見を言えるに越したことはありませんが、評価の比重は他の面の方が重要です。
それは、集団で意見を出しあって結論に向かっていくプロセスにいかに貢献できるのか、ということです。このチームへの貢献度が評価の中心にあることを強く意識しましょう。「自分の属する討論グループ全体の評価が上がるように振る舞う」という考え方で臨むのが良いと思います。
仕事で意見を交わす際に「常に正しい人」、「常に優れた意見を提示する人」というのはほぼいません。採用側はそのような人を求めているのではなく、他のメンバーと協調する中で最適解を見つけることを期待しているのです。だからこそ、周囲とのコミュニケーションや協調に関する振る舞いを確認できる集団討論を選考に取り入れているのです。
間違っても「他のメンバーよりも自分の意見が優れていることをアピールして勝つ!」とは思わないようにしましょう。
どうすればチームへの貢献度が上がるのか
では、どうすれば集団討論においてチームに貢献できるのか、いくつかの項目に分け、具体的な行動と合わせて説明します。
チームへの貢献度を上げるために大切なポイント
チームへの貢献において重要となるのは以下の通りです。
- 議論を活性化させる
- 討論進行に必要な作業に関わる
- 議論を正しい方向に向かわせる
- 他のメンバーへの配慮を示す
これらのそれぞれについて見ていきましょう。
議論を活性化させる
活発な議論が行われれば討論グループ全体の評価が上がります。議論を活発化させるために出来ることは概ね下記の通りです。
積極的な発言
やはり積極的に発言することは大切です。討論グループの中で発言回数は上位半分より上に入るようにしましょう。
口火を切る
新しい論点に議論が移ったとき、議論が停滞しているときなどに、最初の発言によって議論が活発化することは多いものです。したがって、発言回数とは別に、「口火を切る」という場面を1回以上得られると良いでしょう。
討論進行に必要な作業に関わる
司会役を引き受けるかどうか
スムーズな討論進行に司会的な立場の人の果たす役割は大きいです。ほとんどの場合、冒頭で「司会役を決めませんか」ということになることが多いのですが、ここで司会を引き受けるのが得策であるかどうかは微妙です。
非常に上手に司会進行を行えば評価は確実に上がりますが、「司会の仕切りが悪い」と思われたら評価は大きく低下します。つまり司会をやることには比較的大きなリスクがあるということです。
私のおすすめは、司会は引き受けず、司会をサポートするようなポジションを取るというものです。
司会をサポートするポジション
司会をサポートするポジションというのは、司会役の行う進行に適宜アドバイスをする、ということです。
例えば、司会役に対して「○○と□□が重要なポイントだと思うので、この2つを分けて議論しませんか」とか「今、○○と□□という別次元の問題が混在して議論されているので、分けて議論しませんか」といった議論の進め方についての提案をする、ということです。
また時間配分について「あと〇分なのでそろそろまとめに入りませんか」といったアドバイスをするのも良いでしょう。
このようなアドバイスを適切に行えれば、司会役の人よりも良い評価を得られることも多いでしょう。
まとめ作業に加わる
多くの集団討論では、最後にグループとしての結論を出すことがほとんどです(「結論を出す必要はない」という指示がある場合も稀にあります)。すると、一連の議論の内容を最後にまとめて、「我々の結論は〇〇です」ということを決める「まとめ作業」が必要になります。
このまとめ作業には必ず加わるようにします。討論の最後の場面ですから、試験官の印象にも残りやすく、また議論にしっかりと参加したというイメージを与えやすい場面だからです。
そのためには、議論の過程で、「何が論点になり、その論点の結論は何だったのか」をしっかりとメモしておくことが大切です。
議論を正しい方向に向かわせる
討論グループのメンバーには色々な人がいるので、たとえば、あまり重要でないことにこだわる人、現在の論点と無関係な話をする人などがいる可能性があります。このような人をうまくコントロールできないと、討論自体が方向性を失い、討論グループ全体の評価が下がることにも繋がります。
論点を整理する
たとえば、ある課題に対する対策に「事前の対策」と「事後の対策」がある場合、「事前と事後」を混在させて議論しても混乱します。このような場合に「対策を事前と事後に分けて議論しませんか」と論点を整理する発言をすることができれば、討論への貢献度は高くなります。
論点ズレを指摘する
たとえば、先の例で「事前」の議論をしているのに「事後」の話を混ぜ込んでいる人がいることはよくあります。このような場合に指摘をして方向を修正することは貢献度の高い行動です。
ただし、単にズバリと指摘するだけではその人を攻撃しているようにも見えるので「Aさんのおっしゃっている点は非常に大切だと思うのですが事後対策の話なので、後で事後対策の議論の際に再度話しませんか」といった相手に配慮をした表現が必要です。
尚、論点ズレした発言者の後に、自分自身がズレた論点に乗っかった議論をするのはかなり評価を悪くするので要注意です。
客観的な根拠を提示する
これは難易度が高いものですが、「水掛け論」のような状態になった時に、データなど「客観的な根拠」を提示することができれば評価は高くなるでしょう。「○○のデータでは□□の比率は△△よりも高いと出ています」といった指摘です。
しかし、これは討論テーマについての予備知識が必要です。全てを準備することは不可能ですから、「可能な場面があれば」程度に考えておけば良いでしょう。
他のメンバーに配慮した発言をする
集団討論では、他のメンバーに適切に配慮できる「協調性」があるのかという点も評価されています。ひとりよがりに自分の意見を述べるだけでは評価はつきません。
この点で評価を得るためには、誰がどんな発言をしたのかをメモしておくことが大切です。その上で下記のような行動をするのが良いでしょう。
反対意見を述べる時は特に配慮する
誰かの発言とは対立するような意見を述べるとき、最低でも「Aさんの意見とは反対の意見になるのですが」といった言葉を付けるようにします。可能であれば「Aさんの意見は○○という点では非常に重要なことをおっしゃっていると思います。ただ私は~」といった表現が良いでしょう。
反対意見を述べた人も尊重しつつ、自分の意見をしっかり述べるという態度が重要です。
発言機会の少ない人に配慮する
討論グループの中に、あまり積極的に意見を述べない人がいる場合があります。おそらく性格的なこと、極度の緊張などが原因だと思うのですが、発言機会がなければその人は評価されなくなります。受験生としてみれば「ライバルが1人脱落」と考えることもあるでしょうが、「グループ全体の評価が重要」ということを考えると、この人にも配慮が必要です。
このような人を見つけたら「Cさんはまだあまり意見をおっしゃっていませんが、どんな意見をお持ちですか」といった形で発言機会を与えるような配慮を見せるのが良いでしょう。考え方として「1人の脱落者も出さない」といったスタンスが大切です。
高評価を得るための実践上のコツ
上記のことを具体的に実践する上で留意すべき点は以下の通りです。
他のメンバーの発言を注意深く聞き、できる限りメモを取る
集団討論は他のメンバーと協力しながら1つの結論を目指すものですから、他者の意見を良く聞き、尊重する姿勢が大切です。そのためには、下記のことは最低限メモしておきたいところです。
- 誰が何を言っていたのか
- 意見の中に含まれる「採用すべき点」「反対すべき点」「良い問題提起として
見るべき点」など
混乱のないようにメモを取るコツは、着席順に応じてメモを書き込む位置を決めることです。
課題に関する論点のレベル分け、種類分けをメモする
討論の進行に貢献するためには、課題に対する論点のレベル分け、種類分けを自覚的に行うことが必要です。たとえば、特定の課題について、「事前の対策」「事後の対策」という分類、「経済面での支援」と「精神・心理面での支援」、「施策の対象による分類」などです。
これらを課題検討時間中に書き出しておけば、議論がスタートした後に、議論の方向性をどうもっていくのが活発な意見を出やすくするのか、話をまとめやすいのかなどの判断材料になります。また、論点ズレを発見するのにも役立ちます。
発言のわかりやすさ、簡潔さを意識する
グループへの貢献が問われるとはいっても、自らの意見を述べる際に、メンバーに伝わりにくければ評価は下がります。
短時間でわかりやすく意見を述べるコツは、以下の通りです。
- 欲張らず、できるだけ焦点を絞って話す。
- 冒頭に伝えたいことの結論(要約)を述べる
- 1文ずつを短めに区切ることを意識する。
敵対的態度はタブー
たとえ意見が対立する相手がいても、またその相手が敵対的な態度(例えば全否定、意見のスタンスそのものを強く批判する)をとったとしても、こちらはあくまでも協調的な態度を表すことが大切です。
恐らく極端に敵対的な態度を取る人はほとんどいないと思いますが、反対意見を述べる際には、特に相手の感情に配慮し、可能であれば「あなたの意見のここは良いと思う」といったことを織り交ぜながら話すことが大切です。
また、意見の一致や妥協が図れないような場合には、自分と対立者だけで解決しようとせず、「みなさんはどう思われますか」といった形で、他のメンバーの判断を仰ぐ姿勢も有効です。
時間経過をチェックする
時間制限のある中で議論が進むので、一定の結論を得るためには、時間管理がある程度重要です。これは本来司会の役割ですが、議論の整理が大変で時間に対する意識が低くなる場合も良くあります。自分が司会の場合は当然ですが、そうでない場合でも、「そろそろ次に進まないとまずいのでは」といった時間感覚を持ちつつ、時折グループに呼びかける(具体的には司会に提案する)ことも必要ですし、それも貢献だと評価されます。
討論メンバーはチームだと意識しよう
集団討論で同じグループになったメンバーは、ライバルではありますが、ある意味同じ船にのっている同志でもあります。グループ全体の評価が悪ければ、メンバー全員が選考不通過になってしまう可能性もあるのです。
多くの場合、集団討論・グループディスカッションは、最終面接よりも前に行われます。集団討論は一定のふるいにかけるために行われているものですから、グループの評価を上げてメンバー全員が選考を通過できるように意図して討論に臨む方が良い結果につながります。
それでも、上記のような内容を意識して振る舞うことができれば、高評価を受けるグループの中でも、特に高い評価を得ることも可能です。他のメンバーを押しのけて自分だけが評価を得ようとするよりも、チームのためを意識して行動することが良い結果に繋がります。
- 「グループワーク」と呼ばれるものの中には、チームで一定の成果物を作ることが求められるものもあります。たとえば「ここにある材料でペーパータワーを作りできるだけ高くしなさい」といった課題です。一般的に「グループワーク」はこのような共同作業を求めるものを指しますが、現在はこの言葉を、集団討論・グループディスカッションとほとんど変わらない意味で使っている例も多くあります。 ↩
- 弊社では現在、集団討論・グループディスカッションをシミュレーションするような対策は実施しておりません。ただし、集団討論の準備としての課題(ネタ)収集、集団討論のご相談については、模擬面接サービスにおいて受け付けています。ご要望のある方はお問い合わせください。 ↩
早稲田大学法学部卒業。大手資格就職予備校にて法律科目およびESシート作成・面接指導専任講師として約13年勤務。大学でのセミナー実施多数。面接指導担当者の研修にも従事。民間企業で人事採用面接を7年間担当。面接が苦手な方にも寄り添う指導で対応力を引き上げます。