公務員試験面接対策でしっかり準備すべきこと
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本年度も公務員試験の時期になってきましたね。既に筆記試験を終えた方々は、面接試験のことが気になり始めている頃だと思います。これから筆記試験を受験する方も、面接のことが少し気になっているかもしれませんね。
今回は、公務員試験の面接対策として、どのようなことをすれば良いのかについてざっと説明しようと思います。公務員試験に限らず採用面接に共通の事項は他の記事を参照して頂くとして、今回は公務員試験に特有の部分に集中して説明します。
公務員の志望動機には段階がある
ほとんどの採用面接で聞かれるのが志望動機です。エントリーシートや面接カードなどでも記載が必要な場合も多いですね。
公務員の志望動機の場合、その内容には以下のようにレベルの異なるいくつかの段階があります。
- なぜ公務員なのか(なぜ公務に携わりたいのか)
- なぜ地方公務員(または国家公務員)なのか
- なぜその自治体(またはその国の機関)なのか
これらは面接において個別に問われる場合もありますが、これらのすべてを含むような「志望動機をお話しください」という質問に対しても、これらは異なるレベルの問題であるということを一応意識しておく必要があります。
なぜ公務員なのか(なぜ公務に携わりたいのか)
「なぜ公務員なのか」という問いは、「公務員という地位につきたい理由」ととらえるのではなく、「なぜ公務に携わりたいのか」ととらえることが必要です。あくまでも「仕事」にフォーカスした回答をしなければなりません。
また、「なぜ公務員なのか」という問いには、「なぜ民間ではないのか」という問いも含意されています。したがって、「民間ではできないことをしたい」という考えを伝える必要があります。
民間と行政の違いを一概に回答することはできませんが、一般的には「長期的観点で事業を行えるか」、「住民・国民の福利の観点から利益が出ない事業を行えるか」、「特定顧客に対してではなく広く住民・国民に対してサービスを提供するか」などの違いを意識すれば良いでしょう。ただし、行政のおいてもコストを度外視できない点には注意が必要です。
また、これらを回答する際には、ご自身が「何をやりたいのか」ということとの繋がりを考えておくと良いでしょう。住民・国民の福利、といってもそれに至る道筋は一つではなく、「困っている人に直接支援を届ける」ようなサービスもあれば、「結果として全体の利益になるはず」という観点で行われている事業もあります。「やりたいこと」との関係でこの点を意識すれば、民間との違い、公務に携わりたい理由の表現方法も自ずと変わってくるはずです。
したがって、「採用されたら何をやりたいのか」という具体的な仕事のイメージが重要になるということです。
なぜ地方公務員(または国家公務員)なのか
この問いについて、私は常々「良い質問ではないなあ」と思ってはいるのですが、実際の面接では頻繁にこの質問がされています。公務員受験者の中には国家と地方を併願する人も少ないなく、書類に記入してある志望順位が信用できるとも限らないので、面接官は「つついてみよう」と思うのかもしれませんね。
地方公務員と国家公務員の違いは、「特定地域の住民の利益のために仕事をするか、国民全体の利益のために仕事をするか」の違いだと思いがちですが、これは間違いとは言えないまでも正確ではありません。国家公務員であっても特定地方の発展のために尽力することが求められている場合も多くあります。したがって、このような一般的な回答ではなく、「そこで何をしたいのか」という点にフォーカスして回答すべきだと思います。
国家公務員であっても、どの省庁に所属し、どのような職務を担当するのかによって仕事内容は大きく異なりますし、地方公務員であっても担当職務は多岐にわたります。自分がどのような仕事をしたいとイメージしているのかによって、どこに採用されたいのかが決まるのであって、ほとんどの人にとっては「国家公務員か地方公務員か」という地位の違いが問題ではないはずです。
ここでも、「採用されたら何をやりたいのか」が重要になってきます。
なぜその自治体(その国の機関)なのか
なぜその自治体なのか、あるいはなぜその省庁なのか、という問いは非常に重要です。多くの公務員受験者が併願しているとはいえ、その数には限界があり、出願の段階で選択をしています。その選択の具体的な理由を問われているわけです。
地方公務員の場合、多くの人が自分の出身地や現在住んでいる自治体(あるいは近隣の自治体)を受験しますが、「縁がある」ということは志望理由にはなりません。よくあるのが「私を育ててくれた○○市に今度は恩返しがしたい」といった類の答えがありますが、率直にいってこれは「テキトーだな」と思われる回答です。その自治体出身者であればだれでも言えることだからです。また「○○市の人々の温かい人柄に触れ云々」といった回答も良く見ますが、これも「??」となる回答です。どこにでも温かい人はいますし、温かくない人もいますので、根拠にはならないのです。こういった「縁がある」とか「地域の人と接した経験がある」ということは特別に有利な事項ではありません。その地域に縁があるかどうかは採否の重要な決め手になるわけではないのです。
地方自治体についての志望理由を少し乱暴に3つに分類すると、1つ目は土地(街)のポテンシャル、2つ目は課題の独自性、3つ目は政策の独自性です。1つ目の土地(街)のポテンシャルというのは、一旦行政を離れて、地域資源や町の開発度など注目すべき特徴にフォーカスした表現です。伸ばしていくべき資源がある、眠っている可能性があるといったことに注目して「だから○○のために働きたい」と述べる方法です。2つ目の課題の独自性というのは、他の自治体よりも突出した問題を抱えていることを挙げ、それを是非解決したいと考えていると述べる方法です。たとえば、同県内でも高齢化率が突出して高い自治体であれば、地域包括ケアシステムの確立が急務であるとか、若年層の移住促進対策が必要であるとか、重要度の高い政策は自ずと決まってきます。それを自分がやりたいことと結びつけるということです。3つ目の政策の独自性は、その自治体の特徴となる政策に着目して「自分もそのような政策を推進したい」と述べる方法です。たとえば、他の自治体に比べて市民協働推進に力を入れているとか、健康増進事業を強力に進めているとか、企業誘致活動に特徴があるとか、こういった他と比べて独自性のある政策を挙げて「だから惹かれた」と伝えるのです。
国家公務員の場合は、地方公務員で挙げた3つ目になることがほとんどでしょう。つまり、この省庁・機関で推進している政策に焦点を当て、それを評価して自分も携わりたいと述べる方法です。これは現在行っている施策であっても良いですし、今後実行に移されるであろう政策でも構いません。
これらに共通して言えることは、採用後の仕事にフォーカスしていることです。土地(街)のポテンシャルであれ、課題であれ、政策であれ、すべては公務員になった際に自分は何がやりたいか、と結びついています。
採用されたらどんな仕事をしたいのか
公務員の志望動機を考えるとき、結局すべてのレベルで必要になることは「採用されたら何をしたいのか」という点です。「公務員になって住民(国民)のために働きたい」といった漠然としたことではなく、より具体的に「どんな政策をどのように推進していきたいのか」ということです。
この点がはっきりしていない人は多く、あるいは「あまり絞り込んだことを言うと使いにくいと思われるのではないか」という懸念を持っている人もいます。しかし「○○しかやりたくない」ということと「○○をやりたい」ということは全く異なります。「○○しかやりたくない」というのでは採用はされにくいでしょう。しかし、「様々な仕事にチャレンジしたい」というスタンスを持ちつつも「○○に携わりたい」という志向があることは、意欲的で具体的な仕事のイメージをもってしっかりとした考えを持っている人という評価に繋がるのです。
この「採用されたら何をしたいのか」については、「理由」と「具体的な中身」を準備しておきましょう。
「なぜその仕事をしたいのか」という「理由」には何パターンも考えられます。過去の経験からそのような施策に関心が強い理由を見つけることができる場合もあるでしょう。政策が解決しようとしている「課題」への関心の強さを表現するのも1つの方法です。あるいは、大学などでの専攻内容との繋がりもありえます。
「具体的な中身」については、既存の政策・施策のうちどの部分に特に興味を持っているのかをはっきりさせておくことです。たとえば、高齢者福祉に関心があるといっても、地域包括ケアシステムの確立に関心がある場合もあるでしょうし、高齢者の生きがいづくりに関心がある場合もあるでしょう。地域活性化であれば、地域経済振興のための企業誘致に関心がある場合もあるでしょうし、観光振興に関心がある場合もあるでしょう。地域コミュニティ活動の推進という別の切り口もあります。これはどれでも良いことですが、大切なのは、実際に実行されている政策・施策との関係を良く考えておくことです。既に行われていることを「○○すべきだと思います」と述べれば「知らないな」と思われるか「現在の政策が不十分だという批判なのか」と思われる可能性もあります。既存の施策を理解した上で、それを推進するのか、新たに何かを加えるアイディアがあるのかなど、自分の姿勢を明確にしておく必要があります。
まとめ ~ 政策研究は極めて重要
公務員試験の面接対策として重要なこととして「志望動機」と「採用されたらどんな仕事がしたいか」という質問について説明してきました。
「志望動機」については、大きく3つのレベルがありますが、そのいずれにおいても「採用されたらどんな仕事がしたいか」との繋がりが重要になります。つまり「採用されたらどんな仕事がしたいか」というのは「志望動機」の一部であるともいえます。
そして、これらを考えるにあたって重要なことは「政策研究」です。一般的な呼び方として「研究」と書きましたが、とにかく「調べる」ことが大切です。これは民間就職でもその企業の事業を調べておくことが重要であることと共通していますが、公務員の場合はもっと重要です。なぜなら、地方自治体も国の機関も、住民や国民が情報にアクセスできることが大切だとされているため、政策に関する情報公開は昔に比べてかなり進んできているからです。誰でもアクセスできる情報がある以上、「知らなかった」という言い訳は極力すべきではありません。
これらの情報は、ほとんどの場合、自治体や機関のホームページ上で公開されています。「政策」とか「市の計画」など、独立したメニューで公開されています。そこには「第○次○○計画」とか「○○アクションプラン」などの名称が掲げられ、詳細な資料も公開されています。あるいは、人口動態や産業構造などについての統計資料なども見つかるはずです。むしろ、資料が膨大すぎて読む気が失せる人もいるとは思いますが、「何をやりたいのか」をイメージしながら該当部分を探していけば、読むべき部分は自ずと絞られます。
それでも、現状認識と既存の政策への理解を獲得するためにはある程度の時間が必要です。また、その上に「自分が新たにどんなことをするのか」を考えるのであれば、もっと時間は必要でしょう。さらに、特定の分野だけでなく、他の分野についてもある程度の理解はしておく必要があります。
ただ、あなたは「公務員を目指している人」であってまだ「行政官」ではありませんので、「プロ」としての分析や考えを持っていなければならないわけではありません。場合によって的外れなことを言ってしまったとしても構いません(事実誤認はいけませんが)。「知ろうとする姿勢があること」、「実際にそのための作業をしたこと」が大切です。それが、採用後もきちんとした姿勢で職務にあたる姿勢を感じさせ、また志望の本気度を信じさせるのです。
公務員試験の面接では、政策研究に裏付けされた「やりたい仕事」と、それと繋がった「志望動機」が大切です。そのためには、しっかりとした下調べが必要だということは知っておきましょう。
尚、面接対策としては、ご自身のパーソナリティにまつわる表現も極めて重要ですが、これについては民間企業への就活対策と共通ですので、他の記事をご参照ください。
早稲田大学法学部卒業。大手資格就職予備校にて法律科目およびESシート作成・面接指導専任講師として約13年勤務。大学でのセミナー実施多数。面接指導担当者の研修にも従事。民間企業で人事採用面接を7年間担当。面接が苦手な方にも寄り添う指導で対応力を引き上げます。