新型コロナの影響でガクチカがないと悩んでいる人へ(新卒)

日本で新型コロナの感染が始まって約1年半、1回目の緊急事態宣言から約1年が経過しました(2021.5月現在)。

新型コロナ感染拡大の影響は就活にも大きな影響を与え、2020年にはスケジュールが大幅に変更されたり、オンライン説明会やWEB面接などに切り替えたりした企業も多くありました。2021年は企業(自治体等含む)もコロナ禍を織り込んだ採用活動を行っています。

そんな中、一部の学生さんなどからは、「コロナ禍でガクチカがない」という声も聞かれます。コロナ禍による様々な活動制限によってゼミやサークル活動、留学などができなくなり、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)をアピールできなくなったというわけです。

確かに学生さんはコロナ禍の影響を強く受けています。対面授業がほとんどなく授業はオンラインやオンデマンドばかり、ゼミもなくなり、サークル活動も禁止されているという人も多いのではないかと思います。友達となかなか会えないというのも辛いですね。出かけて行って誰かと会い、積極的に関係を結びながら活発に活動する、ということがなかなか難しい状況ですから、従来型の「ガクチカ」がないと感じる人がいるのも無理はないのかもしれません。

そんな方が、「ガクチカ」にどう対応したら良いのか述べていこうと思います。

なぜガクチカは頻出なのか

企業の採用選考におけるES(エントリーシート)や面接で、ガクチカを聞かれることが多い理由は以下の3つです。

  1. 応募者の志向や経験内容から自社とのマッチングを確かめる
  2. 過去の経験から行動特性(コンピテンシー)を把握する
  3. 効果的なコミュニケーションができるのかをチェックする

応募者の志向や経験内容から自社とのマッチングを確かめる

「学生時代に力を入れたことを教えてください」という質問が重要な質問であることはほとんどの人にはわかります。誰もが様々な活動の中で、最も自分をアピールできるエピソードを選んで話すだろう、ということが予想できるからです。人事も「学生時代を通じて1番アピールしたい出来事」を選んで話してくれることを期待しています。

このように、その人が学生時代を通じて最もアピールしたいことを話してもらえば、その人が「何に強い意欲を持っていたのか」、「それにどう取り組んだのか」、「どのような成果を出したのか」等について、その人の「過去イチ」の話が聞けると期待しているのです。

これらを聞くことができれば、「意欲」、「能力レベル」などが、求める人材像にマッチしているのかをある程度把握することができます。

過去の経験から行動特性(コンピテンシー)を把握する

ガクチカを聞けば、「何かの成果(結果)を出すために「どのような性格」、「どのような思考」、「どのような動機」、「どのような価値基準」が発揮され、それが「どのように行動に結び付いたのか」を確認することができます。過去の経験で発揮されたこの行動特性(コンピテンシー)は、将来生じる可能性のある課題に直面した場合にも発揮されるはずだと考えられます。

効果的なコミュニケーションができるのかをチェックする

ガクチカでは、一定のボリュームあるエピソードを話すことになります。したがって、だらだらと冗長に話して焦点の定まらない話になってはいけません。かといって、あまりに簡潔過ぎるとアピール力がなくなってしまいます。

人材価値として比較的重視されるものの中には、「効率的」で「説得的」なコミュニケーションを取れる力が含まれています。端的でわかりやすく、かつ説得力のある組み立てで回答することができるかどうかがチェックされているのです。

派手な内容でなくてもガクチカになる

ガクチカは上記のような意図で聞かれているのですから、ご自身の「過去イチ」の経験を話したいところはあります。たとえば、「サークル活動でメンバーを巻き込んでイベントを成功させた」とか、「留学先で様々な背景を持つ人々と交流し信頼関係を築きながら現地で活発にボランティア活動をした」とか、「ゼミ活動としてコンテストに出場しモチベーションの異なるメンバーをまとめあげ表彰を受けた」などをガクチカにしようと考えていた人はいるでしょう。しかし、コロナ禍で留学・サークル・ゼミ活動が全て中止になってしまい、予定が変わってしまったという人も少なくありません。

上記のガクチカの例は、ある種の「華々しい」エピソードを取り上げています。このようなものをガクチカにしたいと考える人は多くいます。しかし、そもそも「華々しい」実績を上げることが出来る人がそう多くいるでしょうか。また、企業もそのような人材ばかりを欲しいと思っているのでしょうか。

もちろん、華々しい成果を上げた人がいれば人事が一度は注目するでしょう。しかし、人事も学生時代に「華々しい成果」を挙げた経験のある人ばかりだとは決して期待はしていません。特異な経験がない「普通」の人であっても、経験の中に「見るべき」ものがあるということを見つけるのが人事の仕事でもあります。

したがって、目立った「トピック」がなくても、たとえば「日常的な取り組み」であってもガクチカにはなり得ます。コロナ禍で活発な活動が抑制されている中でも、他の方法で日々の地道な努力を積み重ねている人はいるでしょう。ネタは何でも良いのです。活動抑制された中でのサークルやアルバイトの話でも良いでしょうし、学生の本分である専攻の話題でも構いません。「真剣に取り組んだこと」を取り上げれば良いのです。

コロナ禍を逆手に取る方法も

また、コロナ禍で「予定していた活動ができなかった」という人は、「その代わりに何をしたのか」を述べるという手もあります。「留学で語学力向上と異文化理解を進めようと思っていたがコロナ禍で留学はできなくなった」という人であれば、「留学せずにどうやって語学力を向上させたのか、異文化理解を進めようとしたのか」を述べるといった具合です。

コロナ禍で予定は変更になってしまったからといって、そのために「何もしなかった」という人は多くはないはずです。「ゼミが中止になったが、他の学生と交流して勉学を進めたかったので、メンバーを募って定期的にオンラインでミーティングをした」という話でも良いのです。また、「部活動で出場する予定だった大会は中止になり、大学の方針で集団練習も停止になった。その代わりに個人練習の方法を突き詰めた」という話もアリです。「留学もゼミもサークルも中止になり、オンライン授業と課題に追われていた。その中で、自分の特に関心のあった○○については図書館のオンラインサービスで資料を検索し、詳細に調べ研究して深い理解を得た」という話でも良いのです。

100の経験を求めていたものの、コロナ禍で経験値は60ぐらいしか得られなかった。しかし、制限がある中で、自分の意欲に基づいて、「できる方法を探し、精一杯やった」というエピソードを話せば、コロナ禍という変化に柔軟に対応しながら、自分の意欲を行動に移せるのだということをアピールすることはできます。

そもそも、仕事には状況の変化がつきものです。たしかにコロナ禍は滅多にない異常事態ではありますが、仕事であれば「制限があるから何もしない」ということにはなりません。状況の変化に応じて、柔軟に対応し、限られた条件の中で全力を尽くす、ということも人材としての十分なアピールになるのです。

ガクチカだけを取り出して悩んでも意味はない

そもそも、ESや面接は「志望動機〇点」、「自己PR〇点」、「ガクチカ〇点」というような配点になっているわけではありません。面接全体を通じて、能力や意欲、行動特性や性格などが見極められているのです。ペーパーテストのように、1つ1つの質問に点数が割り振られていると考えるのではなく、ESという書面全体、面接全体で評価がされていると考えるべきものです。

ガクチカは人材としての意欲や優秀度、行動特性やコミュニケーション能力をアピールする質問ではありますが、他の質問でもこれらをアピールする機会はあります。さらにいえば、ガクチカはガクチカ単体で評価されているのではなく、他の質問への回答と相まって効果を発揮するものです。

したがって、コロナ禍で自分が想定していたような経験を十分に積めなかったと感じていたとしても、さほど気に病む必要はありません。ESや面接は「全体として」評価されるのですから、他の項目で補ったり、他の項目との合わせ技でアピールできれば良いのです。

また、繰り返しますが、ガクチカは華々しい経験を述べなければならないものでもありません。日常の小さな努力の積み重ねであっても立派なガクチカになり得ます。大切なことは、自分が意欲を持っている事柄に対してどのように向き合ったかであって、「すごい経験をした」とか、「素晴らしい成果が出た」ということそのものがアピールになるのではない、とういことは理解しておきましょう。

面接対策案内へのリンクバナー