面接では強い言葉を使わない

面接は、多数の応募者の中から採用する人を選ぶのですから、ライバルの中で頭ひとつ抜け出すことが必要です。そのためには、回答を通じて自分を売り込まなければなりません。

この「売り込む」あるいは「アピールする」ということを意識すると、回答で「強い言葉」を使いたくなるかもしれません。「絶対」とか「必ず」とか「誰よりも」といった言葉ですね。

印象付けるために強い言葉は必要なのか

世の中には強い言葉を推奨する指導もある

さて、面接対策を行う指導機関や個人講師の中には、受講生に対して「こんなありきたりな志望動機ではダメ!」とか「普通の言い方ではアピールにならない!」「そんな時事ネタについて常識的な意見では印象に残らない」といった指導を行うところもあります。

受講生は志望動機や自己PRに自信がないことが多いため、そのような指摘を受けると「ギョッ」として、「これではダメだ」と思うかもしれません。エントリーシートや想定問答の添削を受けて「絶対に!」とか「誰よりも」といった言葉が使われている添削が帰ってくると、「なるほどな」と思う人もいるかもしれませんね。

あるいは、たとえば時事ネタについて「最近気になったニュースは?」のような質問に対して、自分の意見を述べる際に「このようなことは絶対にあってはならない!」とか「こんな行為をするのはありえない!」などという添削が返ってくることがあるかもしれません。

強い言葉は逆効果かもしれない

このような強い表現は、一見押し出しが強く、確かに印象には残るかもしれません。しかし、これは面接官に評価されるのでしょうか。

これらの「強い言葉」は、その回答の中身、あるいは意見の中身そのものではなく、いわば「言い方」を変えているに過ぎません。志望理由の納得感や、自己PRのエピソードの伝わりやすさ、時事問題への意見に対する理性的な姿勢などを表現するものではないのです。単なる「言い方」に過ぎません。たとえば、大声を張り上げて答えるのとほとんど変わらないのです。

むしろ、これらの「強い言葉」を使うことによって、面接官が不安に感じることも往々にしてあると思います。「絶対に」とかいって大丈夫かね、とか、「誰よりも」とかいって、他の人を全員知っているのかね?とか、根拠のないことについて大口をたたいているだけに感じる場合も多いと思います。 1

ライバルに差をつけるのは言い方ではない

一定の枠の中での個性

そもそも、面接において、極端な個性を主張する必要はありません。多くの採用担当者は、常識はずれな人をとりたいわけではなく、常識の枠の中で有能な人材を取りたいと思っているのです。

もちろん、ワンマン社長が気に入った人を採用するような会社であれば、その社長にはまれば採用のチャンスは上がるでしょうが、ほとんどの会社・組織は、「組織として」採用活動を行っており、組織は多かれ少なかれ常識的なものです。

個性的であることを重視する組織もあるでしょうが、その「個性的」とは、一定の枠の中における個性です。ほとんどの人は、心配しなくてもこの常識の枠におさまっていますが、「採用されたい」という想いのせいで、面接の時に「特異な表現」「強い表現」をしようと思うことがあるかもしれません。指導機関の中に、そのようなことを推奨するようなところがあればなおさらです。

しかし、「個性」を発揮するのは「言い方」ではありません。内容です。

内容で個性を表現する

志望動機であれば、どのような経験や考えが背景にあり、採用後の仕事とそれがどう結びついているのかについて、オリジナリティがあり説得的な内容であるかどうかが問われます。

自己PRやガクチカ、職務上の成果などであれば、「特異な経験」や「突出した成果」が重要なのではありません。「何を経験したか」ではなく「どう経験したのか」が大事です。その経験に際して、何を想い、どう分析し、どう行動指針を立て、どう実行したのか、そのプロセスをわかりやすく伝えることが大切です。

時事ネタであれば、ネタの選定や意見について独自性はある程度求められますが、極端な意見を述べれば良いわけではありません。「誰かの責任を極端に強く問うような発言」や「だれかを悪しざまに言う」ような表現は決して好まれません。一定の意見を持ちつつも、他の意見に配慮したバランスの取れた表現の方が圧倒的に好まれます。

ある程度の社会経験を積むと「単に強いだけの言葉」には意味がない、信用できない、鼻持ちならない、ということはわかってきます。採用担当者も例外ではありません。このような安易な表現方法で差別化を図ろうとするのではなく、回答の「中身」で勝負すべきです。

ネットに溢れる強い言葉に惑わされるな

このようなお話をしたのは、ネット上に「強い言葉」があふれているからです。面接対策に関するコンテンツ(ブログ記事や動画など)でも、極端な指導で無理やり目立たつようなやり方を教えている場合もあります。こういうコンテンツは「絶対受かる」とか「確実に」などという言葉がタイトルに入っていることも多いです。指導の中身だけでなく、コンテンツの宣伝でも「強い言葉」を使っているわけですね。「強い言葉」にはご用心ということです。

ですから、面接の回答の価値を安直に上げる方法はありません。しっかりと自分の経験を棚卸しし、自己分析をしっかり行った上で、何をアピールするのかを明確にして回答を作っていくことが必要です。簡単な近道はありませんが、かといって、ものすごく大変というわけではありません。コツをつかめば自分一人でもアピールできる回答をすることができるようになるはずです。ただ、やり方が良くわからない、という人は、このポッドキャストの他の回をお聞きいただいたり、HPのブログをお読みいただいたり、必要であれば弊社の面接対策を利用してみてください。

面接対策案内へのリンクバナー


  1. ここで言う「強い言葉」というのは、「お客様に貢献したい気持ちは誰よりも強い」とか「絶対に同期の中でトップになってみせます」といった表現です。念のためですが、これらの言葉を過去のエピソードの説明の中で使うのであれば問題ないことがほとんどです。例えば「部活動では誰よりも早く練習に向かい準備をした」とか「絶対に売上120%を達成したいと考え」といった表現です。