面接での時事問題と新型コロナウイルスの話題【追記あり】

【注】この記事は執筆当時に知りえた情報に基づいています。時事的な話題という性質上、各自最新の情報をチェックして内容を考えるようにして頂きますようお願いいたします。

※ 新型コロナウイルスの話題に限らない面接での時事ネタについては別記事を参照してください。
参照:面接で回答する時事ネタ集11選【2020年秋編】

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために発出された緊急事態宣言は、2020年5月14日、39県で解除される見込みです。

政府は14日夜、新型コロナウイルス感染症対策本部会合を首相官邸で開き、「特定警戒都道府県」の茨城、石川、岐阜、愛知、福岡5県を含む39県での緊急事態宣言解除を決定する。

緊急事態、39県で今夜解除 安倍首相、記者会見へ:時事ドットコム

5月4日には5月31日まで延長された緊急事態宣言ですが、当初は5月6日を期限としていたため、5月7日からの活動再開を予定していた企業なども多かったようです。そのためゴールデンウイーク明けには一時期よりも通勤する人も多くなっていたようです。また、企業活動の再開により採用面接等も一部再開されています。もちろん、一方でこれを機会にWEB面接を導入する企業も増えています。

いずれにせよ、一旦は平常時に戻す活動が再開されていくというムードになっていますので、延期されていた採用活動なども正常化されていく方向にあるのだろうと思います。1

 

面接で質問される時事問題とは

面接で質問される事項の多くは、応募者本人に関すること、特に過去の経験などが中心になりますが、一定の客観的事実をネタにされる質問もあります。応募先企業・機関の事業内容に関する質問や業界等に関する質問、あるいは時事問題などです。

時事問題に関する質問は、例えば次のような形でなされます。

  • 最近の時事問題で関心を持っているものはなんですか?
  • 最近気になったニュースはなんですか?
  • 近時報道されていた○○についてはどう思いますか?

時事問題を質問する意味

面接で時事問題について質問する意味は概ね次の3つです。

  1. 社会の出来事について適切にアンテナを張っているか
  2. 情報を自分なりに理解し考えを持つことができるか
  3. 人によって価値観の異なる問題についてバランスよく話せるか

これらを確かめるために質問しているのです。

社会の出来事について適切にアンテナを張っているか

民間企業で仕事をするにしても、公務員として働くとしても、常に世の中で起きていることにアンテナを張り、自らの携わる事業や業務にどのような影響があるのかどうかぐらいは知っておくべきだと一般には考えられています。また、仕事に直接関連性が高い事柄でなくても、社会に対する関心を持って知識を得たり分析したりしながら「物事を見る目」を養っていくことを求めている経営者等もいます。

したがって、面接で時事問題について質問されるのは、「適切なアンテナを張っているのか」を確認する意味があるといえます。

情報を自分なりに理解し考えを持つことができるか

時事ネタを知っている、ニュースを把握している、ということだけでなく、それについてしっかりと理解し、自分なりの考えを持っているのか、というのも人材価値の判断に影響を与えます。

単なる知識を入れるだけでなく、分析・思考までできる人なのかどうか、という評価は、仕事を進めて行く上で、例えば適切な戦略を立てて行動できる人なのかどうか、というった評価にも繋がります。また、仕事上のアイディアを自ら出せる人材なのかという評価にも影響するでしょう。

人によって価値観の異なる問題についてバランスよく話せるか

特に社会性のある問題については、社会に価値観の異なる様々な見解が対立している場合があります。このような場合、面接官によっては応募者がどのような立場に立っているのかに関心を持っている場合もあります。多くの場合、極端に偏った意見を持っていると思われるのは得策ではありません。2

ただ、大切なのはどちらかといえば、「価値観の異なる問題について聞き手のことを意識しながらバランスよく話せるか」という点でしょう。たとえば、自分があまり賛同者のいないAという意見を持っている時に、単にAを主張するだけでは配慮が足りません。Aという意見がマイナーであることを意識しつつ、他のメジャーなBという意見にも配慮しつつ自分の考えを述べられるかどうか、というのはコミュニケーションの能力としては重要です。3 こういったバランスのとれた対応ができるかどうか、という点を評価する材料にもなりえるのです。

面接で新型コロナウイルスの話題が出る可能性は高い

面接で時事問題について質問される可能性は比較的高いです。民間企業であれば業界に関連性の高い話題になることが多いと思いますが、公務員の場合などは広く社会的な問題について話題になることもあるでしょう。

さて、今般の日本では(世界でもですが)、新型コロナウイルスの話題で持ちきりです。メディアでも新型コロナウイルスの話題が大部分を占め、特集番組なども頻繁に流れてきます。

新型コロナウイルス関連の話題を話す就活生・受験生は多い

このような状況ですから、面接で「最近気になったニュースは?」と問われて新型コロナウイルスの話題を出す就活生や受験生は比較的多いと思います。弊社が行っている面接対策で、ご利用者様がこのような回答をされることも非常に多くなっています。

誰もが触れる新型コロナウイルスの話題をあえて外すのもアリ

もちろん、それが悪いわけではないのですが、「新型コロナウイルスの話題には他の就活生や受験生もしているはず」という意識は持っておく必要があります。つまり、面接官はこの話題を飽きるほど聞かされている可能性があるということです。そんな中で新型コロナの話題を出したところで新鮮味はありませんし、印象にも残りにくくなります。したがって、自分で話題をチョイスできる場面では、あえて新型コロナウイルスの話題を避けるというのも作戦としてはアリだと思います。

新型コロナの話題に触れるならオリジナリティをもって

また、新型コロナウイルスに関する話題について述べる場合でも、できるだけオリジナリティのある視点で話せるように工夫をすることが必要だと思います。たとえば、ごく普通で浅い「自粛要請によって休業を余儀なくされている事業者の苦境が心配だ」といったコメントでは、独自性もなく深い思考をしているとは思われないと思います。

したがって、他の応募者が言及しないような角度でこの話題に触れる準備はしておいた方が良いと思います。これについては、下で述べる応募先の事業に与える影響などから考えるのが得策です。

新型コロナウイルスが応募先の事業に与える影響をしっかりと理解しておく

新型コロナウイルスに関する話題を話す場合でも、これが応募先企業や機関などの事業にどのような影響を与えるのかについて述べられるように準備をしておきましょう。

この感染症が社会に与えた影響は大きく、また現時点でその影響レベルがどれくらいの規模になるかを確定することはできません。しかし、現時点でも大きく業績に影響するファクターになることが既に確定している業界もあります。

たとえば不動産業界に新型コロナの影響は?

例えば、不動産業界などでは、オフィス賃貸市場において、テナントの経営悪化による未収賃料の増加や空室率の上昇などが一部生じはじめています。あるいは、リモートワークの急激な普及によって、オフィス面積やオフィス自体の存在価値について再検討を進めている企業も増加しています。オフィス賃貸の解約や面積縮小の動きは既に出始めているという報道もあります。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、テレワークの導入が進むなか、企業の間では、東京都心部にあるオフィスの賃貸契約を解約したり、面積を縮小したりする動きが出ています。

テレワーク導入で都心部のオフィス賃貸解約や面積縮小の動き | NHKニュース

このような市場の大きな変化に応じて、たとえば、苦境に立つテナントとどうやって共存していくのかといった観点や、オフィスビル事業やポートフォリオバランスの根本的な見直しが必要だといった観点は出てきます。こういった方向性はまだ企業サイトなどでは公表されていないと思いますが、素早い企業は既に対応について検討に入っていると思います。また、緊急に対応を余儀なくされている場合もあるでしょう。

他にもハウスメーカーなどであれば中国からの納品遅れによって工期の遅れや資金繰りに影響が出ている場合があります。一方で、リモートワークの普及に応じて、郊外物件へのニーズが高まっていく可能性もあります。不動産関連業界であっても、業種や業態によって影響は様々ですので、自分の志望先に応じて影響を調べたり分析したりしておきましょう。

新型コロナウイルス感染予防で営業プロセスに変化が?

あるいは、新型コロナウイルスの影響が長期化していけば、一般の営業活動についても大きな見直しが迫られる可能性もあります。これまでは、IT化が進む中でも、営業は「会う」ことを基本にしている企業がほとんどで、一部の営業プロセスをオンライン化していたような会社でも、大規模案件のクロージングは必ず「会う」のが通常でした。しかし、適切なソーシャルディスタンスが求められ続けるとすれば、こういった営業プロセスも「会わない」という方式が拡大していく可能性はあります。

製造業などでは新型コロナでサプライチェーンの見直しも

製造業などではサプライチェーンの見直しを検討せざるをえない企業も出てきています。中国で最初に感染爆発したことの影響は国内製造メーカーにも大きな打撃を与えました。もちろん、問題は中国だけにとどまりません。結局はバランスの問題、リスクヘッジの問題ですが、コロナショックを一過性のものと捉えるのか、今後も長い期間続くものとして見るのかによっても考え方は変わるでしょう。難しい問題ですが、メーカーなどは喫緊の課題として検討している企業も多いと思います。

新型コロナウイルス後の消費行動の変化

新型コロナウイルス後の社会では消費ニーズも変化するのではないかという検討も始まっています。BtoC事業においては、今回の感染拡大を受けて人々の行動変容が消費行動にどのような影響を与えるのか、といった観点も必要になっていくでしょう。

公務員は新型コロナウイルスによって浮き彫りになった課題などを

公務員に関して言えば、この緊急事態宣言下での休業支援の在り方、支援申請の方法などで新たに見つかった課題なども多々あると思います。また、医療や介護現場をいかに守るのかといった観点や、感染症がコミュニティ維持に与える影響など、様々な切り口はあります。

★ 2020.7.17追記

この追記を書いている2020.7.17現在、緊急事態宣言が解除されて以来、再び感染者が増加し、感染拡大阻止の観点からはなかなか厳しい事態になっているように見えます。この状況の下で、ある意味、かつてよりも国や自治体の姿勢に対する国民・住民の関心は強くなっている面もあると思います。

そんな中、公務員試験の面接で新型コロナウイルスの話題に触れる際には、国や自治体の感染症対策についての評価については慎重にする必要があります。「これはダメだった」「こうしないのはおかしい」といった単純な批判は控えた方が良いでしょう。たとえば受験するA県では対策をしている一方で、B県ではその対策をしていないような場合、B県を批判するだけなら良い、と思いがちですが、そう単純な問題ではありません。新型コロナウイルス対策についてはまだ途上であり、何が成功で何が失敗なのかを語れる段階ではありません。日々対応に追われている自治体職員からすれば、A県の職員であってもB県の姿勢を単純に批判することに不快感を持つ場合も考えられます。また、残念なことですが、新型コロナウイルス対応について、現在ではかなり政治性を帯びた話題になっている面もあります。したがって、面接官から「A県の新型コロナウイルス対策についてどう思うか」といった直接的な質問が来ない限り、対策の是非に積極的に触れるのは避けた方が無難です。

実際にその自治体が行っていることを評価する、あるいは現在課題になっていてその自治体が今後取り組むことを表明していることなどに触れる方が無難だということです。あるいは、地域社会に与える影響、家庭に与える影響など、行政が支援すべき課題などを挙げるのが良いと思います。

また、国の行う施策(あるいは行わない不作為)についても、かなり人によって評価が分かれる状態ですので、あまり触れない方が無難だとは思います。

応募先との関係を自分の頭で考えておく

新型コロナウイルスの話題は、「気になったニュースは?」といった質問でこちらから持ち出さない場合でも、面接官側から触れてくる可能性もありますので、ある程度予想して考えておいた方が良いでしょう。

時事ネタに関しては、この新型コロナの話題に限らず、まずニュースなどに触れておくことが大前提です。新聞(新聞サイトを含む)が最もおススメのソースで、テレビのワイドショーやSNSからの情報入手はあまりおすすめしません。最近は新聞を信用しないと公言する人も多いのですが、やはり一定レベルの編集を経てリリースされるニュースという点で、情報源としては重要です。

また、ニュースに対する分析や考え方については、SNSからの情報入手はやめておいた方が良いでしょう。SNSで得る情報には自分のフォロー・フォロワーなど特定の傾向を持つ人々によるフィルターがかかっており、いくつものバイアスがかかっている可能性があるからです。4

大切なことは自分の頭で考えること。面倒なようですが、特に応募先や志望業界との関係でニュースを見ることは、「志望動機」や「やりたい仕事」についての考えを深めることにも良い影響があります。面倒がらずにしっかりとやっておきましょう。

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  1. まだまだ油断禁物で、再び感染拡大が始まれば、以前の自粛状態に戻ってしまう可能性があるのは悩ましいところです。 
  2. たとえば採用担当者が政治的価値観などを確認するような姿勢は適切ではありません。しかし、そのような意識を持っている担当者がいるのも現実です。また、極端な意見を持っていることがマイナスだとは個人的には思いませんが、一般的な選考側はマイナスにとらえる場合がほとんどでしょう。 
  3. これは価値観の問題ではなく、まさにコミュニケーション能力の問題です。 
  4. もちろんニュースに触れるきっかけとして使い、きちんと新聞などにあたるのであれば問題はありません。