企業研究・業界研究・自治体研究の方法・情報源(Podcast書き起こし)

就職活動において「業界研究」や「企業研究」が必要であることは、様々な媒体で言われていることです。したがって、それが必要だろうということは多くの人が知っているはずです。

しかし、実際に面接対策を行っていると、応募先企業のこと、業界のこと、応募先自治体のことなどを良く知らない人は多いものです。

「全く知らない」というレベルの人は、まだ対策を始めたばかりで無理もないかな、と思う人も多いのですが、面接本番が目前であっても「ほとんど知らない」という人も実際には多いのです。

全く知らないわけではないけど…

もちろん、その企業が行っている事業が何なのかを知らない人はほとんどいません。しかし、ご自身が面接の回答の中で「知っている」ことを表現できるレベルには達していない、という人は多いのです。

たとえば、製造業において、その企業の主力商品が何なのかを知らない人はまずいません。また、その製品が実社会でどのように役に立っているかも知っていることがほとんどです。しかし、その製品が競合商品と比べてどう優れているのか、あるいは似たような製品がある中でどういう分野を主に担っているのかになると、途端にわからなくなる人が多くなります。

また、主力事業以外に新たに取り組みを始めている事業についても知らないことは多いです。なぜ既存の事業だけではなく新しい事業に取り組んでいるのか、その背景事情についてももちろん理解していません。あるいは、どの市場をターゲットにしているのか、あるいは開拓すべき市場はどこなるのかなどについても、全く答えられないことが多いものです。

もちろん、まだその企業に入社しているわけではないのですから、そこまで知る必要はない、とも言えます。確かに面接官は自分達の行っている事業について、求職者から講釈を聞きたいわけではありません。また、入社後理解してくれれば良いと思っている可能性もあります。

ただ、典型的な質問である「志望動機」「なぜこの業界なのか」「入社してやりたい仕事は何か」といった質問に対して、表面的ではなく、実のある回答をしようとするならば、その企業が行っている事業の内容について多少は詳しく知っておく必要があります。面接官は、当然、求職者から自分たちの事業について何かを教えて欲しい訳ではありません。しかし、自分たちの事業を推進する一員になりたいと「本気で」思っているのかどうかは是非知りたいのです。

この「本気度」「熱意」といったものを伝えるには、「単に熱く語る」というだけでは足りません。どんなに情熱的に語っても中身がなくては意味がないのです。たとえば「どんなに好きか」を熱烈に語っても、「私のことを知っているのかしら」と思われたら、「好き」の信憑性を疑われるのと同じです。

企業研究、業界研究、自治体研究などで差がつく質問

ちなみに、応募先や業界についての知識によって差がつく面接質問は以下の通りです。

  1. 志望動機を話してください。
  2. なぜ弊社(その自治体)でなければならないのですか。
  3. 競合他社(近隣自治体等)と比べて弊社(その自治体)の強みは何だと思いますか。
  4. その企業(自治体)が推進している事業や取組で注目しているものはなんですか。
  5. 弊社(その自治体)の課題は何だと思いますか。
  6. 採用されたら具体的に何の仕事をしたいですか(部署名等含む)。
  7. この業界の将来性についてはどう考えていますか。
  8. 最近の○○市場(その企業が事業を行うフィールド)の動向で気になることはありますか。

これらが全てではありませんし、逆にこれら全てが必ず質問されるわけではありません。しかし、いずれも質問されても文句は言えないようなものです。特に転職組の人は、これらへの質問にしっかりとした背景知識をもって答えなければ、本気度を疑われるでしょう。新卒の人はそこまで正確詳細な理解を求められるわけではありませんが、あまりにもぼんやりとした理解ではやはり本気度を疑われます。

企業研究、業界研究、自治体研究はそれほど大変ではない

企業研究や業界研究は面倒ですが、実際にはそれほどの労力をかけなくても可能です。実際、私は多くの面接対策を承っていますので、対策実施前にそれぞれのご利用者様の応募先のことを調べています。しかし、多数のご利用者様に対応するためには1つ1つにそれほどの時間をかけるわけにはいきません。ご応募先に応じて難易度は異なりますが、長くても2時間程度、短い時は30分程度で調査を済ませます(ご依頼から対策実施まで時間がない場合)。WEBサイトで様々な情報を得られるおかげでもあります。しかし、この短時間で調査した私よりも応募先のことを知らない方は多いのです。

まず企業サイト、自治体サイトをしっかり見よう

企業のことを調べるには、まずその企業のサイトを見ます。時々、採用特設サイトだけを見ている人がいますが、それだけではわからないことが多いのが現実です。ちゃんとコーポレートサイトを確認しましょう。

経営理念を覚えるよりも事業内容をしっかり読み込む

就活生は企業理念などをチェックして頭に入れることも多いと思いますが、私はそこはざっと流し読みです。良く新卒の面接で、企業サイトに掲載されている経営理念などをそのまま話し、「共感しました」といったコメントをする人がいますが、誰でも見ればわかる内容にいくら「共感しました!」と言われたところで、面接官は「はいはい」と思うだけです。もちろん、一応知っておくことは必要ですが。

私はまず事業内容を見ます。事業分野をざっと見渡し、主力事業と比較的若い事業、社運をかけて拡大させようとしている事業、一定の可能性を見出しつつもメインストリームに乗せるまでにはいたっていない事業など、分野ごとの性質や比重を見ます。そこで、ご利用者様がやりたいと思うような分野はなにかを考えます。

尚、自治体の場合、HPには必ず「市政情報」といったページがあります。そこを辿ると、ほとんどの場合「市の計画・構想」といった項目があります。ここを見ていくと、ほぼすべての自治体で「第〇次○○市基本計画」のようなものが見つかるはずです。これらは、多くの場合中期的な市政推進の基本的方向性が示されているのでチェックしましょう。その中から、その自治体に特徴的なものや、ご自身の関心のある分野などを探すのです。より具体的に知りたい場合は、この「基本計画」の類を具体化したものを見ます。「○○市○○プロジェクト」とか「○○プラン」などの名前が付いていることも多いです。どうしても良くわからない時は、自治体の組織図から、該当する政策を実施しているような部署を探し、各部署から施策を探すと良いでしょう。

事業の社会的価値と自分を繋ぐものを探す

その上で、その事業のビジネスとしての強みと、社会的価値の両面を考えます。「考える」といっても自分の頭だけで考える必要はありません。それに該当するような内容は、ほとんどの場合企業のサイトに書かれているからです。そして、社会的価値とご利用者様をどう繋ぐのかを考えます。これは、「志望動機」や「具体的にやりたい仕事」に繋がる調査です。

あえて自分の関心の薄い事業分野を知っておく

これが決まったら、ターゲットにした事業分野とは毛色の異なる事業分野で面白そうなものを一つ選びます。ご利用者様が「これをやりたい」とは言わないにしても、「弊社の事業で注目していることは?」といった質問に備えて、あえて「やりたい」分野以外の事業を探しておくのです。

IR情報やビジネス記事などもチェック

これらの情報を調べる過程では、企業サイトだけでは十分に理解できないこともあります。その場合は、業界に関するビジネス情報サイトなどの記事を漁ります。

また、上場企業であるような場合は、IR情報などにもあたってみます。最新の決算短信を開くこともあれば、IR資料として公開されている「2020○○レポート」のような文書を見つけて開くこともあります。このような資料には、その企業が安定的に収益を上げている事業、新たに収益の柱にしようとしている事業、課題を抱えている事業、それぞれのセグメントを企業がどう評価しているのかが表現されています。あるいは、国内市場、海外市場などに対する考え方なども理解できます。さらに、企業サイトの冒頭にぶち上げられているような数値目標とは別に、よりリアリティがあり、セグメントごとに設定されている数値目標や達成度なども書かれていることがあります。

さらに、これらの情報だけでは、その企業の各事業の価値がいまひとつ把握できないという場合は、競合他社のサイトや記事などにあたります。応募企業と競合企業の「違い」を知ることで、応募企業のことを深く理解できることもあるからです。

これまでの調査プロセスの中で、気になったことがあれば検索して調べます。例えば、専門用語がわからない、あるいは理解があやふや、という場合はこの時点で不安を解消しておきます。

採用情報特設サイトも役には立つ

さらに、企業の採用情報ページには「先輩社員紹介」のようなコンテンツがあることが多いので、特に「具体的にやりたい仕事」とマッチするような社員紹介を読み込みます。また、意外と「社長や幹部社員のインタビュー記事」なども役立ちます。

すぐに回答に落とし込むのではなく背景知識を増やすつもりで

私はこれをかなり機械的にフルスピードでやるので、短時間で調査は終了しますが、ご自身の応募先であれば1日ぐらいはかけても良いでしょう。

ただ、調査しながら面接回答に落とし込もうとすると無理が生じます。次々と情報に当たる中で修正しなければならないこともあります。したがって、ひと通りに目を通してから、何を参照して述べるのかを考えましょう。

一般的に言われている情報源について

就活情報サイトなどでは、企業研究や業界研究の情報源として『日経新聞』『会社四季報』『就活四季報』などが推奨されている場合があります。

もちろん、これらにお目当ての情報があれば、これらを使用することを否定はしません。しかし、新聞は特定の日の記事だけを読んでもあまり意味はありませんし、四季報などは該当する企業が掲載されていなければあまり意味がありません。また大手企業の情報しか掲載されていないということもあります。

多くの人の場合、企業研究や業界研究などは、あわててやっていることが多いと思います。そういう場合はやはりネットをフル活用するのが手っ取り早いと思います。もっとも、採用情報特設サイトや企業サイトの表面だけを見ても理解は進みません。サイトを見ながら「次に何が知りたいのか」を考えて情報を検索しましょう。ただし、まとめサイトや掲示板サイト、個人のSNSなどを情報源にするのはやめましょう。情報の正確性に何の担保もないからです。

また、採用説明会に参加すると、応募先への理解も進み、面接時の回答にも入れ込めるので、可能であれば参加しておくと良いでしょう。

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