面接で語るべきは「結果」ではなく「プロセス」「行動」

最近、面接対策のお申込みがかなり集中しています。やはり新型コロナウイルスの影響による自粛が解除されてきていることの影響でしょう。延期になっていた面接の実施が決まる人が多い印象です。時間があまりないので、今日は短めの記事にしようと思います。

ご利用者様の現況、ご応募先、ご履歴などは様々ですから、模擬面接や添削サービスを行う際には、その状況に合わせた対策をしなければなりません。新卒なのか既卒(転職)なのか、民間企業なのか公務員なのか、特殊法人なのか、どのような職種なのか、応募先の業種、規模、現下の業績、経営方針等に合わせて、講師の頭も切り替えることになります。

しかし、面接の回答に関して共通して言えることは「結果」ではなく「プロセス」「行動」を語ろう、ということです。今日は、この点について少し説明します。

面接での回答は「結果<プロセス・行動」の画像

面接は過去の結果を競い合う場ではない

たしかに結果、成果から考え始めるという面はある

新卒就活の面接で、たとえば「学生時代に勉学以外に力を入れたことはなんですか?」という質問があります。この場合、部活動やサークル活動、アルバイト等に関して回答することが多いでしょう。運動部で大会で結果を出したエピソードや、サークルでの発表会で賞を取ったこと、アルバイトで店舗の売上を向上させたことなどは定番ですね。はっきりした結果とまでは言えなくても、補欠からレギュラーに昇格したこと、皆で満足のいく展示を行ったこと、後輩を育成したことなどを答えることも多いでしょう。

また、転職面接で「あなたの職務経歴においてご自身の成果として挙げられるものは何ですか」という質問があります。この場合、職歴の中で自分が最もアピールしたい職務を選び、そこで実際に出した成果を述べることになります。営業職であれば、対前年比売上120%とか、顧客獲得数1.5倍とかはわかりやすい例ですね。一般事務であれば、業務効率を向上させて残業を減らしたなんていうことも挙がられます。後輩をしっかりと育て上げた経験もありですね。

どのような回答であっても、やはり「どのような結果を出したのか」ということは問われます。また、回答を考える際にも、自ずと「どんないいことがあったかな…」といった形で考えることが多いでしょう。アピールを目的にするのですから、「良い結果」を挙げるのは当然ですね。

結果だけを比較しても人材価値は測れない

ただ、「結果」を挙げればアピールになるのか、というとそうではありません。

たとえば、応募者の中に野球経験者2名いて、片方は全国大会経験者、片方は県大会止まりだとしたら、採用側は必ず全国大会経験者を採用するかといえば、そんなことはありません。なぜなら、野球が仕事ではないからです。全国大会に出場するような野球チームに所属していたからといって、県予選敗退チームにいた人より、仕事ができるとは言えません。

あるいは、営業職で3年連続売上前年比120%の結果を出した人と、前年比105%の結果だった人と比較して、前者の方が必ずより優れた営業マンだということはできません。所属している企業がそもそも違いますし、売っている商品・サービスも違います。その時々の条件も全く異なります。そもそも、他の会社における営業マンの個別の成績を外部から知る方法はまずありませんから、「前年比120%」というのが本当なのか確かめる術もありません。

したがって、「結果」だけを述べたからといって、直接アピールになるわけではないのです。もちろん、目を引くデータを提示して語れば面接官の気を引くことはできるでしょう。たとえば、「入社3年目で○○地区の営業成績1位になりました」と話せば、「へえ~」という反応はあるかもしれません。しかし、これはあくまでも入口です。

面接官は応募者の話す「結果」だけを聞いても、その人の人材価値を決めることはできません。これから働いてもらう職場は過去の職場とは異なるからです。仮に応募者の話が本当で、過去に素晴らしい結果を出していたからといって、今度も良い結果を出せるとは判断できません。

評価されるのは「プロセス」「行動」である

面接官が知りたいのはその「結果」をどうやって出したのか、ということです。面接ではその人物を評価するためにほとんど「過去」を聞くしかありませんが、それは過去を知りたいのではなく「将来を予測」するためです。

ある課題や目標に対して、何を考え、どのような方針の下にどう行動したのかを知ることで、将来課題や目標に向けてどのような「行動を取りそうなのか」、これが知りたいことです。いわゆる「行動特性(コンピテンシー)」とも言われるものですが、面接官は結果そのものよりも「行動特性」を知って将来を予測しようとしているのです。

したがって、面接は過去の結果を競い合う場ではないのです。

プロセス・行動こそが大切

成果がありました、といったところでそれは単に「結果」に過ぎません。結果には原因があるはずですが、一つの結果に対して原因は一つではありません。行動した結果、「良い成果が得られた」と本人が考えていたとしても、実は単に「ラッキーが重なった」という場合すらありえます。したがって「成果」そのものをいくら誇っても本当はあまり意味はないのです。

大切なのは、成果を出すために「何を考え」「どういう方針を立て」「どう行動したのか」です。

例えば、全国大会に出場するために、チームでどのように目的意識を共有し、どこを強化すべく練習し、どうやってチームの連携を深めていったのか、このプロセスに自分がどう主体的に役割を果たしたのかが大事です。

また、売上目標を達成するために、どのようなターゲットに対して、どのような働きかけを行い、どのように顧客と向かい合ったのか等、自分自身の工夫や努力の内容が大事です。

取引先や協力企業の人たちと良好な関係を築いて成果を上げていった、という話にしても、その良好な関係はどうやって築いたのかが大事です。「良好な関係」というのは成果の手段の一つですが、しかし「良好な関係」もひとつの結果に過ぎません。様々なタイプの人がいたり力関係がある中で、良好な関係を築くために自分が何をしたのかが大事です。

このような「プロセス」や自分自身の「行動」を説明することで、あなたがどのような人材なのかが面接官に伝わるのです。「なるほどこういう場面でこのような行動をするなら今後も課題に直面した時に同じように行動してくれるだろう」と予測が立つのです。また、完全な予測は不可能だとしても、一連のエピソードの信憑性は感じるでしょう。成果を話すだけでは真実味がなく、具体的な行動、プロセスを説明することで真実味を感じてもらえるのです。

コラム

研究開発職・技術職・エンジニアなど専門性が高い職種の場合

研究開発職や技術職、エンジニアなど、専門的知識を駆使し、開発したり新たな技術を駆使したりするような職種の場合、「結果」のみを提示してアピールになると考えている人は多いと思います。例えば、「顧客からAについて○○という性能を上げたものを要求されて難易度が高かったが、粘り強く研究・実験を重ねることで、要望通りの品質を達成した」というように、「良いもの」を作り上げたということ自体がアピールになると考えがちです。

もちろん、その成果が、業界内で見ても特筆すべきものであり、多くの人が注目するようなものであれば、この作り上げた「良いもの」自体がアピールになることもあります。しかし、そのようなことは極めて稀であり、津々浦々で行われている研究開発の現場で日々達成されている成果のひとつに過ぎないことがほとんどです。したがって、作り上げた「良いもの」を挙げるだけではアピールとしては不十分なのです。

そのような成果を上げるために、あなたがどのように考え、どのように行動したのかを伝えなければ、面接官が最も知りたい「今後の職務においてどうやって成果を上げるのか」を伝えることはできません。したがって、専門性の高い職種であっても、成果物や製品そのものをアピールするだけでなく、そこに至ったプロセスをアピールする必要があるのです。

そして、そのプロセスにおいては、「研究者としての」、「技術者としての」思考方法や行動、たとえばどのように仮説を立てるのか、どのように実験を行うのか等、専門職としての行動のあり方を伝えなければなりません。その中には、他の技術者との連携協力や、外部組織との交流等も関係してくることもあるでしょう。

提示しさえすれば十分なアピールとなるような成果を上げている人は稀であり、成果を上げるためのプロセスにおいて発揮される、専門職としての能力をアピールしなければならないのです。それは、専門的な知識や発想力などだけではなく、他者との関係の中で価値を生み出す力のようなものも含まれます。

ここで、わざわざ研究開発職や技術職、エンジニアを取り上げたのは、これらの人たちの面接回答が、製品や成果物だけを提示するだけで満足してしまっているものになりがちだからです。面接選考で評価されるのは結果そのものではなく、あなた自身の能力であり、その能力は結果を出すためのプロセスで発揮されているのです。

もちろん良い成果はアピールすべきだが

もちろん、良い成果そのものをアピールしていけないわけではありません。特に転職面接の場合は、職務における成果を具体的な数値等で表現できることが、仕事に真剣に向き合ってきたことを伝える手段にもなるでしょう。また、特筆すべき成果であれば、成果を述べるだけで面接官が身を乗り出してくることもあるかもしれません。したがって、もしあなたに誇るべき「営業マンとして売上全国1位を2年連続で獲得した」といった華々しい成果があるなら、それを伝えないのはもったいないことです。

しかし、華々しい成果を述べたからといって評価に直結するかといえばそれは別問題です。話に興味を持ってもらえる効果はあるとしても、成果そのものが人材価値の評価に繋がるわけではないのです。華々しい成果には、大変な努力や苦労があるはずで、面接官が聞きたいのはその努力や苦労、あなたの「行動」なのです。

無数にあるプロセス・行動からアピールの強いものを選ぶ

このようなアドバイスをすると時々「プロセスや行動を表現しようとすると話がすごく長くなってしまう」といった相談を受けることがあります。

ある成果を出すプロセスの中には、無数の行動と小さな結果が積み重なっています。たとえば先ほど述べた「協力企業の人たちと良好な関係を築いた」というのは、売上等の成果というもっと大きな結果を出すための前段階の結果です。このようにある大きな成果を出すためのプロセスの中には、無数の「行動→結果」「行動→結果」が連なっています。これらの全てを説明しようとすると、当然長々とした説明にならざるを得ません。

しかし、面接の回答で、ストーリーの全てを話すべきではありません。あなたの人材価値を最も表現できる部分に的を絞って話すべきです。例えば、売上達成のためには、ターゲットを分析した、商品開発部に働きかけて改良をした、関係企業の協力を得た、顧客との信頼関係を築いた等々、様々なプロセスがあるでしょうが、その中で自分が最もアピールしたい点を選択すべきです。

限られた時間の中で自分をアピールする時に欲張ってはいけません。基本的に1つの質問に対してアピールできるポイントは1つだけ、ぐらいに考えた方が良いでしょう。そうすれば、上の例では、「分析力」、「発想力」、「社内他部署との連携関係をうまく構築したこと」、「社外関係者との良好な関係構築」、「顧客からの信頼」のいずれかを選び、そこをメインに話すことになります。

「プロセス」「行動」をメインに据えた回答を

以上のように、面接の回答では単に「結果」を述べるだけでは足りません。大切なことは、結果を出すために経た「プロセス」、自分が主体的にした「行動」です。これが「きっと入社後もこんな風に働いてくれるだろう」と面接官が評価してくれることに繋がります。

ご自身の面接回答を振り返って、「結果」だけを回答していないか、「プロセス」「行動」を適切に表現しているかどうかを今一度チェックしてみてください。

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