面接では考え方や理由よりも具体的な行為・行動を話そう(Podcast書き起こし)
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※ この記事はポッドキャストのフリートークでお話しした内容を書き起こしたものです。
答え(結論)を述べた後に何を話すべきか
面接の回答では、一言だけで答える場面はあまり多くなく、質問に対する答え(結論)を述べた後、それについて少し詳細に説明する必要がある場合も多いです。
例えば「あなたが組織で仕事をしていく上で大切にしていることはなんですか?」という質問がされたとしましょう。これに対して、ベタな回答ですけれども例えば「他者と協調していくこと、チームワークです」という答えをしたとします。
これ自体は回答になっていますが、それだけだと単に「チームワーク」という言葉を述べたに過ぎませんから、あなたが何を考えているのか、あなたがどんなことをする人なのか、つまりどんな人材なのかがわかりません。ですから、これを少し膨らませて詳細に説明する必要があるわけです。
理由や考え方を述べる人は比較的多い
これについて、ご利用者様の多くに見られる傾向として、「大切にしていることはチームワークです」と述べた後、なぜチームワークが大切なのか、その「理由」を滔々と述べる方が比較的多くいらっしゃいます。
たとえば「なぜなら、仕事というものは一人で完結するものではなく、必ず他の人の仕事にも影響しますし、また他の人の成果に支えられている部分や、自分の成果が他の人の仕事を支える部分もあります。一人ひとりが切り離されて仕事をしていると十分なパフォーマンスが発揮できません。また、一人ひとりの人間の知識や経験には限界がありますが、複数の人間の知識や経験で補い合うことができれば、もっと大きな成果が出せるはずです。」といった回答が続いていく、というパターンです。
これは、チームワーク、あるいは組織で何かをやるという上での、自分の「考え方」を述べているということですね。チームワークが大切であることの根拠を滔々と話しているということです。こういう話を聞いて面接官がどう思うかというと「チームワークが大切だというのはわかっているんだがな…」といった風に思うだけでしょう。何か特別な考え方、「ん!」と思うような考え方を提示できるとしても、面接官が関心を持っているのは実はそこではない、と思うのですね。
面接官が知りたいのはあなたの「行動」である
面接官が関心を持っているのは、たとえばこのチームワークの例でいえば、チームワークを良くするために、あなたが具体的にどんな「行動」をとっているのか、どんな「行動」を今後とっていくのか、という風なことです。それこそが、あなたの人材価値を具体的に示す内容だからなんですね。
具体的にいうとですね、適当にちょっと考えてみると、「他の人の仕事の進捗などにも関心を払って遅れそうな方、行き詰っているところを見つけたら必ずフォローに入るようにしています」とか、あるいは「チームの中で情報の共有が乏しいことでトラブルが大きくなっていくような経験がいくつもあったので、自分から呼びかけてミーティングを行い、情報共有の具体的な方法や手段について話し合って実践した」という話とか、あるいは「自分の知識や経験をチーム全体の中で共有してもらえるように、自分の成功や失敗なども含めてレポートにしてみんなに配るようにした。そうすると、他のメンバーもそれにならって、そういうものをお互いに発信しあうようになった」といった話です。
あるいは、営業マン・営業チームであれば「営業先で効果のあったトーク、反応の悪かったトークの内容を具体的な事例としてお互いに伝え合うことを目的に、毎朝ミーティングを定例化するように提案して実践した」といった話も良いでしょう。このように具体的にチームワークを良くするためにあなたが「実践したこと」を述べる、ということですね。これこそが、あなたという人の人材価値を見極めるのに最も決め手になる材料というものです。
考え方や理由よりも行為や行動を優先しよう
もちろん、これらの具体的な行動を支えている考え方、理性的な根拠も重要ではあります。しかし、どうしてもこれらはどうしても抽象的な話になってしまいがちです。こういう抽象的な話の中に人を惹きつける、あるいは納得感のある特別なものを入れ込んで話せる人というのはかなり稀な存在なんですね。
他人が聞きたいのは行為や行動である
もう少し、面接を離れて、わかりやすく説明してみましょう。たとえば知り合って間もない人に自分を紹介する中で、「僕は冒険好きな人間なんですよ」と話したとします。その後「なぜ冒険が好きなのか」を滔々と語ったとしましょう。それではあまり良い反応は得られないと思います。たとえば「冒険というのは新しい経験を自分にもたらしてくれて、自分の世界をひろげてくれるから好きなんですよ」とか「冒険をすると日常生活では経験できないようなことや、知り合えないような人と出会えたりして、とてもワクワクして刺激になり生きている実感があるんですよ」という話で熱弁をふるったとしても、聞いている人は「あ、ああ…そうなんですね」といった反応しかないかもしれません。
しかし、具体的な冒険の中身を話したとしたらどうでしょう。たとえば「今年の初めに、新種の昆虫を探すという名目でアマゾンに行きたいと思ったんです。でも、こちらでコーディネータを探すのも難しいので、ぶっつけ本番で人も物も現地調達するというつもりで見切り発車でブラジルに渡りました。わからないこともたくさんあって、人に騙されそうになったり危険な目にあったりしましたが、すごく良いガイドの人に出会えて、その人に案内してもらってアマゾンに入りました。あまり人の入らないような地域にも行けましたし、実際には会えなかったものの、文明社会と接触をほとんどしていない種族の人達が生活した痕跡などにも触れることもできて、すごく興奮しました」と話せば、「結構無謀だと思うけどすごい冒険をするんだなあ」とか「冒険するためには多少の危険をいとわない、本当に冒険が好きなんだなあ」と聞き手が感じる可能性は高いでしょう。冒険が好きな「理由」を述べるよりも、よほど冒険好きであること、どんな冒険をする人なのか、ということが伝わるということですね。
限られた時間を無駄にしない
面接に話を戻すと、面接というのは限られた時間で行われます。20分とか30分とか、まあものすごく詳しい面接をする場合は1時間ということもあるでしょうが、通常は15分から30分程度というのが普通だと思います。ですから話したいことすべてを話すわけにはいきません。限られた時間の中で伝えたいことを端的に話すということが大切です。こういうときに、自分の考えや信念といった抽象的な話に時間を使ってしまうのはもったいないと思います。それよりもあなたがどんな人材なのかがより伝わるような表現をすべきです。それを伝えられるのは具体的な行為や行動なのだ、ということなんですね。
考え方や理由に長々と時間を使ってしまいがちな人というのは、必ずしも話下手であったり面接が苦手な人というわけではありません。むしろ、物事を論理的に考えていたり、それを言葉で表現できたりする人であることが多いのも現実です。こういう人は、自分が話をしっかりしているという自覚はあるのですが、面接官の反応があまり良くないと感じることも少なくないでしょう。
通販番組でも「何ができるのか」がコンテンツの中心
面接というのは短時間で自分を売り込む機会です。極端なたとえ方をすると、自分という人材としての商品を売り込む、それが面接という場です。たとえば、通販番組、テレビショッピングなどで、この商品がなぜ高性能なのかという理由を長々と話したり、なぜこのような高性能な商品を作ろうと思ったのかを長々と話すよりも、具体的にこの商品で何ができるのか、「こんなことができますよ」「あんなこともできますよ」ということに多くの時間を充てるのは当然だと思います。テレビショッピングでは実演などに多くの時間を割いていますけれど、これはやはりこの商品で「何ができるのか」を訴求したいからです。なぜかといえば、消費者が一番知りたいのはこの商品で「何ができるんだろう」ということだからです。お金を払うだけの価値のある「できること」があるのかを知りたいということなんですね。
人材価値は「どんな行動」をする人なのかで決まる
これは面接でも同じことです。採用担当者が知りたいのは、「あなたという人材を採用したら具体的に何をしてくれるのか」ということです。考え方や理由を述べるのがダメというわけではないのですが、それに多くの時間を割くよりも採用側が知りたいと思っているあなたは「どんな行動」をする人なのか、採用されたら「何をしてくれそうな人なのか」を伝えることに時間を使うべきだということです。
今日は、面接での回答では、「考え方」や「理由」よりも具体的な「行為」や「行動」を話すようにしよう、というテーマでお話をしました。今日もお聞きいただきありがとうございました。
早稲田大学法学部卒業。大手資格就職予備校にて法律科目およびESシート作成・面接指導専任講師として約13年勤務。大学でのセミナー実施多数。面接指導担当者の研修にも従事。民間企業で人事採用面接を7年間担当。面接が苦手な方にも寄り添う指導で対応力を引き上げます。