陰キャだから面接がうまくいかない?そんなことはありません
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いわゆる陰キャ・陽キャという言葉は、私のような世代で使うことはありませんが、若い人たちは日常的に使うようですね。陰キャという言葉の意味は辞書的に確定はできませんが、言葉のイメージ通りの「性格が暗い」といったものではなく、いわゆる「スクールカースト」において「イケてない」方に分類される人のことを指すようです。また、コミュニケーション能力が高くない人も陰キャに分類されることが多いようです。スクールカースト…いやな言葉ですね。陰キャという言葉も私などは慣れません。
言葉の意味はともかく、若い人たちの中には「陰キャにとって面接は鬼門」「就活の面接は陰キャに課せられた最大の試練」などと言う人もいます。また、陰キャを自認している人が「陰キャだから面接がうまくいかない」と実際に言っていることもあります。
言葉の是非は置いておくとして、ここでは、本当に「陰キャ」にとって面接はそれほど大変なものなのか、また、「陰キャ」の人が面接を通過するためにどんなことに気を付ければ良いのかについて書いてみようと思います。
陰キャの「自覚」が面接を苦手にしている
「陰キャ」を自認する人が面接を苦手と感じるのは、多くの場合、「自分は陰キャ」という意識が強く影響しているように思います。
対人関係に自信がないことが面接での萎縮を招く
面接は「人物試験」とも呼ばれるように、人物そのものを評価する選考だと考えている人も多いですね。実際には、その職務における人材価値を評価しているのですが、そのように感じることも無理はないかもしれません。また、採用側も漠然とした主観的評価を行っている場合があるため、完全に否定することができない面もあります。
日常的に対人関係を結ぶことにあまり自信がないと、自分が「他者から評価される」もっといえば「好かれる」といったことにも自信が持てなくなりがちです。「きっと自分はあまり良い印象を持たれないだろう」という思い込みが面接への苦手意識を強めていることもあります。こういうハードルがある人とない人では、確かに面接に向かう際の苦しさは大きく異なるかもしれませんね。
しかし、面接は「友達を作る」ためのものではありません。したがって、主に友人関係や学校の人間関係の中でイメージされる「陰キャ」であるかどうかは、面接で直接影響することはありません。また、「友達になりたい」と思わせる必要はなく、「職場の戦力になりそうだな」と思われるかどうかが重要な点です。この点は、陰キャか陽キャかといった選別は関係ありません。
陽キャは面接が得意というのは思い込み
陰キャの人からすると「陽キャは面接が得意なんだろうな」と思えるかもしれません。しかし、私の経験上、陽キャに分類されるような人だからといって、選考を通過する面接力が高いとは限りません。他人と話すことを苦にせず、また愛想良く話すことはできる人でも、職場に採用する人材を選別する場では、なんとも評価しがたい人も多くいます。
もちろん、民間企業の中には「ノリ」を重視しているような会社もありますが、基本的に人材価値とは直結しないものですから、一般の企業はそのようなことだけで応募者を評価することはありません。
また、陽キャと言われている人でも、いざ面接になるとうまくいかないことを考え、しっかりと対策している人も多くいます。つまり、陽キャの人でも面接に向けて努力をしている人は多くいるのです。
問題は、陰キャと自認する人が、陽キャの人とはスタートラインが違うと思い込んで、陽キャとの差を意識しすぎることが問題なのです。そのことによって、面接の対策と正面から向き合う気持ちにならないということもあり得ますが、それでは何ら前に進めません。
陰キャか陽キャかという選考基準はない
上に書いたことと重複しますが、面接選考において「陰キャか」「陽キャか」という選考基準は当然ありません。もちろん、接客や営業などのコミュニケーションを重視するような職種では、その人が他者に与える印象、人としての明るさのようなものが重視される場合はあります。しかし、他の職種ではそれ以外の部分の方が重視されていることの方が多いのです。また、対人スキルが求められるような職種であっても、「友達が多い人」が優秀なわけでもありません。プライベートで人間関係を作ることと、仕事として対人関係を築くことは別種のことであり、むしろ「仕事としての割り切りをもって対人関係を作る」という姿勢が求められているともいえます。
これらのことから、陰キャを自認する人は、「陰キャだから面接に向いていない」といった考えを捨て、「陰キャか陽キャか」といった区別から一旦離れて、面接選考そのものに正面から向き合って対策を考えるべきだといえます。
仮に売り手市場であっても主導権は採用側にある
面接を経て内定を出すのは採用企業側です。ですから、どんなに売り手市場であっても、決定権は採用側にあります。当然の話ではありますが、採用されたければ、内定を出したいと採用側に思わせるしかありません。
選ぶのは採用側なのだからその選考基準に合わせるしかない
採用側が内定を出したいと思うのは、その企業・組織の求める人材像とマッチしている人です。そうであれば、各企業・組織がどのような人材を求めているのか、を考えて面接に向かう必要があります。
コミュニケーションスキルが高い人を求めている企業ももちろんありますが、それよりも、1つの事を突き詰めて分析し続ける粘り強さが求められるような職種もあります。社交性のあるタイプを求めている場合もあれば、深く特定の相手との関係を築ける人材を求めている場合もあります。表面的な愛想の良さよりも、実質的な真摯さや誠実さを重視している場合も多々あります。
これらは業種・職種によって異なりますので一概には言えませんが、応募している企業や組織の実施している事業や職種などが、どのように積み重ねられ展開されているのか、そのために必要な仕事の内容はなんなのかなどを具体的に調べ考えることによって、ある程度「求める人材像」はわかります。
その「求める人材像」からあまりにもかけ離れているなら問題ですが、その中から1つや2つ程度、自分に当てはまりそうなものはあるはずです。全方位的に優れている人材というのは稀であり、重視されるいくつかの要素のうち、当てはまるものがあるという人材が一般的です。ですから、陰キャを自認する人であっても、その要素を探し出し、それをアピールする方法を考えることが大切です(これは陰キャ陽キャに関わりませんが)。
陽キャが選考基準に合致しているとは限らない
繰り返しますが、選考基準に「陽キャか陰キャか」というものはありません。また、陽キャだからといって選考基準に合致しているとは限りません。単に「交友関係が広い」「誰とでもすぐに打ち解けられる」という傾向が、業種・職種によってはほとんど重視されていないことは多いものです。
ですから、陰キャを自認する人も、そのことを意識するよりも、面接というものを理解して正面から対策を行うことが最も大切なことです。
陰キャの面接対策は面接という「ゲーム」のルールを理解して合わせていくこと
面接対策において大切なことは、面接には一定の共通ルールがあり、そのルールを理解してそれに適合するように振る舞わなければならない、ということです。詳しくは別記事に書いています(参照:面接落ちは人格と関係ない。理由を見つけるには就活というゲームのルール理解を。)。
下記には、陰キャを自認する人が特に気をつけるべき点を挙げました。
表情や話し方など最低限の印象点は足切りボーダー
面接試験では、業種・職種に合わせた応募者の人材価値が測られていますが、それでも、人と人とが対面してコミュニケーションをする選考ですので、最低限の印象点というものがあります。
面接で印象が悪くなる態度や話し方というものは確実にあり、これらを理解して、印象を悪くしないようにする努力は必要です。詳しくは別記事に書きましたが(参照:面接でありがちな印象の悪い話し方19選)、ここでは陰キャを自認する人にありがちなものだけを抜粋して項目を挙げておきます。
- 視線が相手に向いていない
- キョロキョロしてしまう
- 緊張が「暗さ」として表れてしまう
- うまく答えられないときの表情が悪い
- うまく答えられないときにきちんと謝らない
- 謝るときにヘラヘラしてしまう
- 全般的に声が小さい
- 語尾で声が小さくなる
これらは、日常的な癖のようなものですから、自分自身では自覚していない場合もあります。自分の話している様子をビデオに撮ってチェックしてみるのは有効な方法です。一番良いのは、誰かと模擬面接をしてみて評価を受けることです。やはり、生身の人間を前にして会話形式で面接をすると、弱点が明らかになります。
「アピールする」という意識を強く持つこと
面接は、面接官が質問をし、応募者が回答をする、という形式で進みます。面接が苦手な人は、「質問に回答できるかどうか」に不安を持っていることが多いのですが、ただ回答するだけでは選考通過が難しいのが現実です。
面接は「質問への回答を通じて自分を売り込む場」です。単に質問に「不正解」を述べなければ通過するというものではありません。筆記試験とは全く異なるものなのです。面接を受けているのがあなただけであれば、あなたの採用可否だけを決めれば良いのですが、実際には他の応募者との競争です。「不可」のない回答をするだけでは競争に勝ち残ることはできないのです。
回答を通じて「自分のアピールする」という意識を強く持たないと、面接官主導の面接の場で「回答はしたものの手応えがない」という面接を繰り返してしまいます。自らアピールしなければ、採用側はあなたを採用する理由を見つけることはできないのです。
面接での質問を想定して回答を考えるとき、「この回答で自分のどんな能力・性格・経験のプラス面をアピールするのか」を強く意識するようにしてください。
陰キャには陽キャのような話すべきエピソードがない?
陰キャを自認する人の中には、「陽キャのようにアピールできるエピソードなんかないよ…」と思っている人もいるでしょう。確かに、広い人間関係の中で様々な活動をアクティブにしてきた人に比べると、目立ったエピソードなどないということもあるでしょう。
しかし、面接選考では別に「派手な」エピソードが求められているわけではありません。また、誰もが「ほー」と感心するようなエピソードでなければならないわけでもありません。大切なのは、そのエピソードを通じて自分自身が「得たもの」の方です。言い換えれば「何を体験したか」よりも「どう体験したか」の方が大切なのです。
一概には言えませんが、陰キャを自認する人は、何か一つのことに入れ込んだり、突き詰めて考えたりする傾向が強いように思います。物事を突き詰めて考えたり取り組んだりした経験は、重要なエピソードになります。
また、人間関係が広くなくても、一部の人間と深く付き合った関係があればそれをエピソードとして挙げれば良いのです。確かに、日常的に一切の人間関係がないような生活をされているとすれば、それをそのまま表現するのは不利に働きます。しかし、人との関係は何も友人関係だけではありません。学校・アルバイト・職場などで何がしかの人との関わりを持っているはずです。また、全く消費をしない人はいないので、消費者として他者と関係を結んでいる場面もあります。そのような1つ1つを取り出してみて、そこに何がしか自分自身が気を付けていること、重視していることなどを思い浮かべていけば、ほとんどの場合、アピールできるエピソードはあります。
もちろん、そのエピソードの事実関係をそのまま話しても相手は「お、おう」となってしまうかも知れませんが、大切なのは表現の仕方です。ごくありふれたものに見えるエピソードも、見方次第で特別なものになります。
自分自身が普段頭の中で考えていることをしっかりと言語化してみると、陽キャにはないであろうご自身の良い面が明確になってくることも多いと思います。慎重であること、熟考すること、物事を表面的に見ず本質を見ようとすることなど、言語化してみると、ご自身を「陰キャ」にしている部分が、実は優れている点であることも多いのです。
相手の理解しやすさに最大限配慮する
陰キャを自認する人は、「人と話すのが苦手」だと感じている人も多くいるでしょう。陽キャを見ていると、口数も多く、周囲と楽しそうに会話をし、どんな話題でもいくらでも次々と発言を繰り返し笑っている、と感じ、自分とのギャップを強く意識する人もいると思います。
しかし、面接の回答の仕方がうまい人は、上に挙げたような陽キャのイメージで話しているわけではありません。日常的な緩い人間関係において重宝される会話力と、面接(ひいては職場)で求められるコミュニケーションの力は異なるものです。
面接で評価の高い話し方は、なんといっても「内容の理解のしやすさ」です。相手が情報を理解しやすいように表現してくれるかどうか、というのは重要な評価ポイントです。また、限られた時間内でのコミュニケーションですから、端的であることも重要です。
特に重要なのが、「まず結論を述べる」ということです。質問に対する回答の結論部分を冒頭に端的に示すことが大切です。冒頭に結論が述べられれば、面接官は結論を頭に入れた上でその後に展開される説明を聞いていくことができます。これは面接官にとって、非常にわかりやすく、安心して話を聞けて、話を聞く負担も少ないのです。逆に、物語のように時系列で説明がされた後に結論が述べられるという話し方だと、面接官は注意深く聞かなければ理解に至らず負担も大きくなります。
実は、このような端的でわかりやすい表現は、実は陽キャと呼ばれる人の方が苦手なことも多いのです。学校で多くの友達とたくさん会話している人や、営業トークに慣れている人などの中には、面接になると面接官が顔をしかめるようなわかりにくく、くどい表現になっていることが良くあります。日常的な会話においては、ある程度の「無駄」が会話の潤滑剤になっていることは良くありますが、面接回答においては「無駄」はあくまでも「無駄」です。実際の職場の業務連絡においてもそうですが、粘り強い営業力を誇る営業マンが、社内連絡の場では周囲に煙たがられていることは良くあります。
陰キャを自認する人は、必要なことを端的に表現するという観点で表現方法をしっかり考えて臨めば、陽キャの人よりも評価を高くすることも可能なのです。もちろん、上に述べた「アピールする」ということまで省いては意味がありませんのが、アピールポイントの表現についても端的でわかりやすい表現を心がけるのは大切なことです。
陰キャのイメージに囚われず面接対策を正面から行うことが大切
ここまで見てきたように、いわゆる陰キャだからといって面接がうまくいかないというわけではありません。視線の問題や声の大きさなど、日常的についている癖は多少矯正する必要はありますが、回答内容や回答の表現の仕方については、意識次第でいくらでも良くなります。
「陰キャだから陽キャよりも不利」といった先入観に囚われるのは無意味です。そんなことよりも、面接で求められているものをしっかりと理解し、正面から面接対策をすることが面接突破の最短距離です。
また「話すこと自体が苦手」という人は、とにかく話す練習をすることが大切です。どんなに口下手、話し下手の人でも、練習をすれば必ず話せるようになります。私の経験でも、面接練習3回目まで一言も話せなかった人が、最後は頼もしい振る舞いや面接回答ができるようになり、見事合格したということもあります。
陰キャ・陽キャなどということにこだわらず、面接そのものと真剣に向き合うことが最も大切なことなのです。
早稲田大学法学部卒業。大手資格就職予備校にて法律科目およびESシート作成・面接指導専任講師として約13年勤務。大学でのセミナー実施多数。面接指導担当者の研修にも従事。民間企業で人事採用面接を7年間担当。面接が苦手な方にも寄り添う指導で対応力を引き上げます。