面接落ちは人格と関係ない。理由を見つけるには就活というゲームのルール理解を。
■もくじ(クリックでジャンプします)
面接は疲れますね。応募先のことを調べて、自分の経験を棚卸して、当日は身なりを整え、時間に遅れないように気を付けながら移動し、早く着きすぎて近くで時間を潰したりして会場に向かう。面接官からは、ありがちな質問から、質問する意図がわからないような奇妙な質問まで色々ぶつけられて、必死に答える。本当はそんな気分ではないけれど、できる限り元気に振る舞い、疲れ果てて家に帰る。
そんなことを繰り返しているのに、うまくいかない、結果が出ない、「お祈りメール」ばかりが届く。これで疲れるな、落ち込むなと言われてもそれは無理というものです。
面接落ち=人格の否定と考えるのはやめよう
面接に落ち続けると、自分の人格を否定されているような気分になる人もいるでしょう。面接選考について「人物試験」と呼ぶようなところもあり、わざわざ「職務に適性のある人格・能力があるかを判定する」なんてことが書いてあることもありますから、いわば「人格」を判定されているような気持ちになるのも無理はありません。
しかし、面接を通過しないからといって、あなたの人格が評価に値しないと考えるのは間違いです。当たり前と言えば当たり前のことなのですが、そんな風に思ってしまう人もいるでしょうから、なぜ「人格の否定」ではないのかについて書いてみます。わかりやすくするために少し不穏当な表現があるかもしれませんし、また長文になりますがご了承を。
面接官には人格を見極める力などない
就職・転職活動や公務員試験などで面接をいくつも受けていると、採用側の人間は自分の入りたい企業や機関で実際に働いている人間なので「偉い」人に見えることもしばしばあるでしょう。また、採用側は「選ぶ」側ですから応募者に余裕を持って接するため、威厳を感じることもあるかも知れません。
しかし、面接官はほとんどの場合、単なる「普通」の人です。欠点もあり、組織内で評価が高い人だとも限りません。面接を「仕事」としてやっている人に過ぎません。そして、面接を通じて組織に適合する人を選別する能力についてもかなりばらつきがあるのが現実です。
実際、採用活動において選考者のスキルを平準化することは企業において大きな課題で、各種の工夫がされている場合もあり、しっかりとした企業・組織であればそういった基準に従った選考を行う努力がされていますが、いかんせん人間のやることですから、完全な標準化ができていることはほとんどありません。
面接官Aが応募者Bさんを評価しても、面接官Cは応募者Bさんを全然評価しないなってことは良くあることです。面接官Aは「Bさんは過去の経験からも人間関係の構築が良好で、うちの顧客対応やチーム内の連携もうまくやれそうだ。良い性格だ。」と考えているのに、面接官Cは「Bさんは一見そうは見えないけれど、実は組織にトラブルを持込むクラッシャーだ」と評価するという場合もあります。この例は極端ですが、私が実際に体験したことです。面接官Cが私で面接官Aが当時の私の上司です。私の力及ばずBさんは採用されましたが、採用後3ヶ月で社内トラブルを起こして退職しました。逆に面接官Cが「Dさんは自分を表現することに不器用なところがあるが、思考に独自性がありそれを過去の活動で表現してきた実績もある」と評価しているのに、面接官Aは「Dさんはなんとなく非常識な感じがしてうちの組織にはなじまないな」とかなり低い評価をしている場合もありました。これまたCが私でAが上司です。私のプッシュでなんとかDさんを採用しましたが、会社のクリエイティブ部門で若手のエースになりました。
この例は極端ですが、無能な評価者というのはいくらでもいるということです。そもそも上の面接官Aは「性格が良い」などと言って、応募者の人格評価をしていますが、なぜ自分が相手の人格評価ができると考えているのでしょう。応募者の人格を見極めてやろうという姿勢で面接に臨むこと自体が私は間違っていると思いますが、そのような面接官も現実にはいます。しかし、相手の人格を分析するスキルなんてどこで身につけるのでしょうか。何によってその能力が検証されているのでしょう。
そもそも、面接選考は人間を並べて人格を品評する場ではありません。「その組織が求めている職務を遂行する適性があるのか」という限定した条件にマッチしているかどうかだけを判断する場です。そもそも面接官の側にこの感覚がないなんて低レベルなことも津々浦々で起こっています。ですから、面接官の評価であなたの人格としての価値を決めることなどできないのです。
本来何度も同じ人間が接触しなければわからない
面接は最も長くても1時間程度、短ければ15分ぐらいで終わります。そのような短時間でその人のことを理解しようとすることには無理があります。そのことは多くの企業がわかっていて、また人間の主観に左右されることもあって、複数回の面接選考を課す場合も多くあります。
しかし、ほとんどの場合、複数回の面接選考では面接担当者が変わります。それは偏った評価を防ぐとか、若手にフィルターをかけさせて残った応募者だけを幹部が面接するという効率の観点からのこともあります。もちろん、前の面接の内容については申し送りがされるのが通常ですが、応募者はその都度初めて会う人と面接をしなければなりません。
企業は「法人」ともいって人格を擬制されていますが、実際には様々な人間の集合体に過ぎません。意思統一しているようでも実際には人によって物事の理解や意向、感覚は様々です。そのような異なる人間が次々と出てきて面接をしたからといって、応募者に対する理解が深まる保証はまったくありません。
恋愛でも「この人と本気でつきあってもいいかな」と思うまでには何度かのデートを重ねることが多いでしょう。1回しか会っていなければその人のことを良くわかったとは言えなくて不安です。2度目、3度目のデートでその人の意外な良い面を見たり、逆に悪い面に気づくこともあるでしょう。
私は多くの方と模擬面接をしており、面接をしてみると大体その人の傾向はつかめますが、それでも2度目、3度目と模擬面接をしていくうちにその人の隠れていた良い面に気づくことがあります。どんなに見極める力があろうとも、やはり1度きりではわからないことも多いのです。
しかし、採用面接では各面接官にとっては「単発」の面接を繰り返しているに過ぎません。単発の面接が複数回行われているだけです(厳密にはそうとも限らない優秀な企業などもありますが)。ですから、面接選考では応募者のことなど大してわからないのです。
人格ではないが、その人の持つある一面での能力や適性は見られている
まともな人事担当であれば、応募者の人格を見極めようとするのではなく、職務に対する適性・能力を見極めるというスタンスで面接に臨みます。ですから、面接で落ちた場合、その適性・能力が欠けていると判断されたか、他の人の方があなたより優れていると判断されたかの可能性は高いでしょう。
問題は、各応募先の考える「ある一面」が何かということです。あなたには他に良い面がたくさんあるけれど、応募先の求める「ある一面」については評価が高くなかったということは考えなければいけません。
たとえば、BtoCの業態で顧客対応をする人材を求めている企業の場合、顧客と良好な関係を築き、顧客の購買意欲を向上させることのできるような能力が求められます。過去の経験としては、アルバイトやサークル活動、ゼミ、あるいは前職での経験などにおいて、他者と良好にコミュニケーションを取りながら上げた実績が欲しいところです。そして、その経験そのものよりも、その経験が「事実なのだろうなあ」と思わせるような話し方をしていなければ評価に繋がりません。単純に「話すのが苦手」「人と接するのが苦手」な人であることがわかってしまえば不適性だと判断される可能性は高まります。
顧客と直接接するような職務でなくても、ほとんどの仕事は他者とのコミュニケーションを取る必要があります。コミュニケーションの方法は業種や業態、職種によって異なりますが、直接人と顔を合わせて信頼関係を深め、難しい案件をクリアしていかなければならないような場合、やはり「人と接するのが苦手」だと悟られたら採用は遠のきます。
こういった採用側の求める「ある一面」の適性・能力が、あなたという人物の表現とマッチしているかどうかが、最も大きなポイントです。これはエントリーシートなどで文書上いくら主張しても、直接会話することでその信憑性が判断されるのだということは意識しておく必要があるでしょう。そして、就活・転職活動、公務員試験における応募先が求めている「ある一面」がどのようなものなのかをある程度推測しておくことも重要です。
就職活動という土俵に乗ることの覚悟は必要
ここで展開すると収拾がつかなくなるので述べませんが、現在の企業の採用活動のあり方(公務員の採用のあり方も含めて)について、個人的には色々と問題を感じています。本当に各採用者にとって価値のある人材をしっかりと選別できる仕組みになっているのかどうかについては疑問があります。実際の採用活動を行っている側も問題意識を持っていることがありますが、現実的な対応として妥協しながら採用しているということもあると思います。したがって、現在の採用選考は決して万能ではなく、穴だらけのものだと思います。
それでも、あなたが企業に採用されて働きたいと考えているなら、その現実に即した対応をするしかありません。支配的なルールに従って、そのルールの中で結果が出せるように振る舞うしかないのです。それがイヤなら、自ら起業をしたり、フリーランスとして生きるなど大胆な方法を採るしかありませんが、その選択にはそれなりに大きなリスクがあります。私はそのリスクを取るなとは言いませんがそう簡単なことでないことは確かです。
面接落ちを繰り返して落ち込むと、就活全般に対してムカついたり批判的な気持ちになるだろうと思います。私はそれは正当な批判であることも多いだろうと思います。しかし、それでも就職活動をするしかないのであれば、再度「このルールの下で闘う」ことに対する覚悟を持つしかありません。そうしないとあなたを取り巻く現実は変わりません。
こんな時は「人格云々」という感覚は一旦脇に置いて、この土俵の上で適用されているルールを意識的に理解し直そうとすることが必要ではないかと思います。
ゲームのルールを理解しそれに合わせて行動することが必要
ここからの話は、「ものすごい才能」「人並み外れたポテンシャル」がある人には当てはまりません。あなた自身が自分をそれなりに評価しているとしても、一方でごく普通の人間だと考えている場合に当てはまる話です。
ポーカーフェイスという言葉があるように、トランプのポーカーというゲームでは、自分の手札や相手の手札の状況を読みあい、自分の内心を読まれないようにしながら有利にゲームを進めるというのが基本です。自分に良い手が来たときに素直にニヤニヤしたり、手が悪いときにあからさまにガッカリしたりすると簡単に相手に見抜かれてしまいます。そうすると、自分が勝てる時に大きく勝つことができず、一方で自分が下りざるを得ないときにも損害が大きくなりがちで、トータルでは大敗してしまいます。ポーカーに強い人はブラフを上手く使いながら勝利します。ポーカーのテーブルにつくなら、「自分は表情が正直に顔に出てしまうからなあ」と言い訳したところで負けることに変わりはありません。なぜなら、ポーカーはそういうかけ引きが大きく影響するゲームのルールになっているからです。勝ちたければそのルールに即した行動を取るしかありません。
Photo on Visual Hunt
面接のルールは明文化されていませんし、採用側の都合によって容易に歪められるものですが、それでも一定の共通する内容があります。応募者としては、その共通するルールをしっかり理解してそれに即して行動することが、「負け」を少なくするため最善策です。
面接選考というものの共通のルールといえるものがあるとすれば、それは「募集職種と応募者とのマッチングを確かめるための場」であるということです。もちろん、上に挙げた例のように「応募者の性格が…」などというバカな担当者がいる可能性もありますが、そういうイレギュラーなものは意識しても仕方ありません。そもそもそういう企業に行っても良いことはないでしょう。ですから、一定の質以上を備えた応募先が「募集職種と応募者のマッチングを確かめている」ということを意識することが、結果を出すために最も大切なことです。
募集職種とマッチしていると評価されるために大切なこと
面接において、採用側が求めている人材像とあなたがマッチしていると評価されるためには、いくつかのポイントがあります。そのいくつかを挙げてみましょう。
募集職種の仕事内容を理解している
「マッチしている」と主張するためには、「何と」マッチしていると言うべきなのかを理解していなければいけません。当たり前のことですが、ここの考えが甘い人は多いものです。
具体的には企業研究(公務員なら政策研究)とその職種の具体的な仕事内容への理解が大切です。その理解があるからこそ、「私がこの仕事にマッチしている」とか「ぜひその仕事をしたい」ということが言えるのです。しかし、採用用の特設サイトに掲載されている内容だけを表面的に把握しているだけという人が実際には少なくありません。
また、この仕事内容への理解を面接で長々と話す人がいますが、それも間違いです。採用側は当然仕事内容を理解しているので、それを長々と聞かされても全く意味がないのです。理解している事業の内容と職種の仕事内容のどこにフォーカスを当て、それがいかに自分とマッチしているのかを主張することが大切なのです。
企業研究が足りない、というアドバイスを受けると、詳細に調べてその内容を立て板に水で説明できるようになる人もいるのですが、そのようになるための努力はいわば「前提」の部分に注力しているに過ぎません。大切なのは、その仕事と自分を「繋ぐもの」です。それは調べればわかるような「客観的な事実」ではなく、「自分の意思」「自分の欲望」といった主観的なものが必ず含まれています。企業や自治体の就活特設サイトを精読するだけでは全く足りないのです。しっかりとした前提を基に、「自分」を話す必要があるのですが、そこが出来ていない人は非常に多いように思います。
この部分の不足が出やすい面接での質問は、
- 志望動機
- 採用されたらやってみたい仕事
- 応募先の事業内容で関心のある分野
- 5年後、10年後のキャリアイメージ
といったところです。
募集職種に適性のある能力や性格を有している
就活や転職面接、公務員試験での面接では「長所」や「自己PR」といった質問は良くされます。自分をアピールしなさい、ということですね。また、過去の活動(サークル、アルバイト、前職など)においての成果や困難を乗り越えた経験、いわゆる「学チカ」(学生時代に力を入れたこと)なども、結局はそのエピソードを通じて「あなたをアピールしてくださいね」ということです。
人には色々な良い面があり、それは人によって様々ななのですが、何の前提もない中で「あなたをアピールしなさい」と言われても途方に暮れるでしょう。「なんのためにアピールするのか」がはっきりしないと、自分の何を話せば良いのかわからないのです。異性にアピールする時と、企業に採用されたくてアピールする時に、内容が自ずと違うのは当然ですが、それは相手が求めているだろうものが異なるからです。そうであれば「何が求められているのか」を意識した上で自分をアピールしなければなりません。
採用側が他者と協調することよりも、個人プレーで切り拓いていくような人材を求めているのに、「チームワークを支えるのが得意」といっても採用側は「ほう」とは思いません。一方、社内外と人たちと折衝を繰り返しながら仕事を進めることが求められているのに、「ひとりで黙々と地道に研究を進めた」などとアピールしてもあまり意味はありません。しかし、応募先によっては、これらのアピールが意味を持つこともあります。相手が求めているものによって価値は変わるのです。このことを意識していない人が実は多くみられます。
聞きたいのはあなた自身の行動である
アピールポイントとして「チームワーク力」「コミュニケーション能力」というのは多用されまくっているものですが、これらの言葉はある意味空疎なものです。「チームワークが得意です」「コミュニケーション能力があります」と言われたところで、それは単なる自己申告に過ぎないものであり、かつ、「どうチームワークを作りあげるのか」「どんなコミュニケーションができるのか」について説明がなければ、その実体もわからず、信憑性も確かめられません。
面接はあなたを紹介し売り込む場ですから、たとえば「チームワーク」「コミュニケーション」の中身こそが大切です。その中身とは、過去に自分がした行動そのものです。「何を考えどう行動してどういう結果が出たのか」をリアリティをもって伝えてはじめて「なるほどチームワークを作る上げるのが得意なんだな」「いろんなタイプの人とうまくコミュニケーションをとって人間関係を築けそうだな」という判断を得ることができます。
「チームワークが得意です」「コミュニケーション能力があります」というだけの答えは、「このエアコンは涼しくなります」といってエアコンを売ろうとしているのと変わりません。「接客業をやっていたのでコミュニケーション能力に自信があります。」と言ったところで、「このエアコンは12畳用なので涼しいですよ」と言っているに過ぎません。「他のエアコンにはない○○という工夫がされているので涼しいですよ」という話が聞きたいのです。チームワークをつくるために自分が具体的に何をしたのか、他の人にどう働きかけるコミュニケーションをしたのか、「行動」とその背景にある考え、そして効果を話さなければなりません。
この部分の不足が出やすい面接での質問は
- 学生時代に力を入れたことはなんですか(学チカ)
- アルバイトでどんなところが成長しましたか
- 前職ではどのような成果を上げましたか
- 長所はなんですか
- 自己PRをしてください
といったものです。
実は最も大きく影響しているのは表現の仕方である
面接はわざわざ対面して会話をする選考方法ですから、応募者の様子、話し方などから受ける印象は合否に大きく影響します。それは単純に面接官の主観による「好き嫌い」ではなく、これもまた「募集職種とマッチしているかどうか」という観点で判断されています(もちろん、そうでない面接官が稀にいるのも事実ですがこういう存在は無視していきましょう)。
そこで、どのような表現がプラス(あるいはマイナス)になりやすいのかについていくつか挙げていきます。当然、募集職種によって基準は異なるのですが、ほとんどの場合に共通するような内容だけを挙げていくことにしましょう。
見た目やマナー
見た目やマナーなどについては、腐るほど情報が溢れかえっているのでここでは詳しく触れません。1つ言えることは、見た目で自分を表現することが重視されている職種(美容系の職種)でない限り、見た目で自分を主張しようとはしないことです。つまり、見た目では目立たず、内容で頭を出すというスタンスで臨むようにしましょう。それが最も安全な方法だからです。
結論ファースト
たとえばあなたが上司だとして「あの件はどこまで進んでいる?」と部下に聞いたとき、「あれは○○の部署に○○を依頼して進んでいたのですが、○○から異論が出て○○の見直しをしています。おそらくその見直しに○日ぐらいかかると思うのですが、私が○さんに釘を刺したのでもう少し早く終わる可能性もあります。」という答えが返ってきたらどう思うでしょうか。
「で、結局どこまで進んでるんだよ」と聞き返したくなるでしょう。仕事でのコミュニケーションでは、端的に内容が把握できる説明ができることが求められます。前の質問では「はい、○○段階までは進んでいます」という回答をまずはすべきです。その上で「○○の部署に依頼している件が、○○からの異論で見直しになっています。おそらくこの見直しには○日程度かかります。」といった補足説明があるべきでしょう。
つまり、結論ファーストです。
日常会話においては、ストーリーを長々と話して最後に結論らしきものが出てきたり、明確な結論が出ないままに話が終わるとうことは良くあります。それは、余裕のある状況で、物事の把握についてシビアさが求められておらず、むしろ会話をすることそのものが目的であったりするからです。しかし、仕事の場では、知りたい情報をできるだけ端的に把握し、必要な補足情報は結論を知った上で把握するという順序であることが効率的であり正確でもあります。
面接での表現もこの簡潔さを意識しましょう。
簡潔でわかりやすい表現をしてくれる人は、それだけで「この人の話はわかりやすいなあ」「よくわかった」という受け止め方をしてもらえます。一方、長々とストーリーに付き合わされた上に結論らしきものがはっきりしないとまでなると、「何言ってるかわからん」「聞くのが疲れる」「きっと一緒に働いてもこんな感じなんだろうなあ」と思われてしまいます。
情報を絞る
たとえば、部活動について話すときに、「私は野球部に所属していました。甲子園に出場するために県大会で勝つ抜く為、朝練や放課後の練習はもちろん、休みの日や夜間にも自主練習をして努力し技術の向上を図りました。特に筋トレが課題だったのですが、他の部員とウエイトを競い合うなどしてモチベーションの維持に努めました。また、主将をしていたのでチームワークの向上も頑張りました。部員とコミュニケーションを密にとり、皆が納得するような練習メニューを作成したり、甲子園出場の目標を共有するように努めました。応援団や保護者の方々にはいつも支えていただいていたので、卒部の際には自分が企画して感謝の会を開き、お礼を伝えることができたときは自分自身も感動しました。」という回答をしたら、面接官はどう感じるでしょうか。
親切な面接官であれば、「主将として部員とどんな風にコミュニケーションを取るように心がけていましたか?」とか「甲子園出場の目標を共有するために意識して行っていたことはなんですか」といった追加質問をしてくれるかもしれません。しかし、そんな質問をしてくれない可能性の方が高いです。
先の回答には、「自分自身が向上する努力をした」「リーダーシップを発揮した」「周囲に配慮して適切な人間関係を築ける」といった内容が含まれていますが、それらを自覚的に選んでアピールしているのではなく、「言いたいこと」「言えること」をただ羅列して述べているだけになっています。このような表現では、面接官はその話から何を受け取れば良いのかわかりません。百歩譲って受け取るべき情報が3つあることがわかっても、そのどれに注目すれば良いのかは面接官が判断しなければなりません。
このように面接官が理解しにくいこと、あるいは面接官に負担を強いることは、「話がわかりにくい」「めんどくさい」といった印象を与えます。
必要なことは、その回答で自分の何をアピールするのかをきちんと決めることです。普通、1つの回答でアピールできることは1つです。もちろん、「長く話して良いよ」というメッセージを受け取ったら2つぐらいに増やしても構いませんが、それでも、1つずつは明確に区別して伝えなければなりません。つまり、「自分の何をアピールするのか」「そのアピールに必要な情報は何か」を取捨選択して、大事なものだけにフォーカスして回答すべきなのです。
情報をたくさん出せばその中から何か良いものを面接官が見つけてくれるだろう、と考えるのは、ある種の甘えでしかありません。面接は自分を売り込むいわば「プレゼン」をする場ですから、何にフォーカスしてプレゼンするのかは自分が決めなければならないのです。
「私は野球部に所属し主将を務めていました。甲子園出場の目標を部員全員が常に共有できるように、毎日のように全員参加のミーティングを開き、チームの現状と次の試合に勝つために必要なことなど情報の共有を重視しました。このことによって上級生の立場からは見落としていたようなチームの課題を下級生が指摘してくれるようになるなど効果がありました。また、全員が同じメニューで練習をすることをやめ、各自が自分の課題を出し合ってそれぞれの課題にあったいくつかのメニューに分けて練習をするようにしました。この結果、私が2年次の時には県大会初戦敗退でしたが、3年次にはベスト4まで進出することができました。」
先の回答と分量はほとんど変わりませんが「リーダーシップをどう発揮したのか」にフォーカスをした回答になっています。同じ分量を使いながらも、リーダーシップの中身、具体的な行動が示されているので、話にリアリティがあり、チームの実力向上のために腐心し皆を引っ張ったのだろうとわかります。
情報を絞る、というのは単に伝える情報量を減らすというのではなく、そこで求められる大切なものだけにフォーカスを当て、その部分はしっかり伝えるということです。
表情や声の大きさ
実は、どのような表情で話しているか、声がどんな風に聞こえるのか、という非言語的な面は面接官の評価を大きく左右しています。言葉での表現はいくらでも作れますが、このような非言語的な表現はいわば「素」に近いものが出るだろうと考えている人が多いからです。
この部分は実は面接が「嫌い」と感じる人の大きな理由にもなっているところではないかと思います。自分の「素」の振る舞いを矯正して「演技」しなければならないというのはイヤなものですものね。しかし、それも就活というゲームの支配的なルールです。ゲームのテーブルにつくことを選んだのであれば、勝つためにルールに合わせて行動しなければならないのです。
もちろん、これも応募職種で求められている人材像とのマッチングの問題でもありますから、絶対的な基準があるわけではありませんが、面接官が評価しにくいタイプを上げると下記のようなものになります。
視線を合わせない
「相手の目を見て話せ」とは良く言われますね。個人的には、別に普段なら好きに話せば良いと思うのですが、面接では評価者がいるのでそうもいきません。相手の目を見て話さない人は、一般的に「人と接すること自体が苦手」な人なんだろうなあ、と推測されます。多くの仕事では他者とのコミュニケーションが求められますので、このような評価はそれだけで致命的なマイナスを負う可能性があります。
質問者の目(のあたり)を見て話す
多くの場合、面接選考の場では面接官が複数人いますが、回答している質問を発した面接官の目を見て回答するのが基本です。目を見て話すのが苦手な人にとっては非常に苦痛かもしれませんので、目ではなく、鼻や口のあたりを見るようにしても構いません。顔をあげて相手の方を見ていると思われれば良いのです。また、質問を発した人以外に、時々目を配るのも自然で良い方法です。
多少自然に視線を外すことは構わない
目を見て話すといっても、相手の目を「ガン見」してまったく視線をそらさないのはかえってちょっと怖いですよね。ですから、回答を少し考えているときや、話が切り替わる時などに、視線を横にそらすなどするのは構いません。それでも、全体の8割ぐらいの時間は相手の方を向いて話すようにしましょう。
声が小さい
回答している声が小さいと、単純に聞きづらく、面接官は耳をそばだてなければならないので負担を感じます。そして何よりも、声が小さいことは「弱気な人」「元気がない人」「人と話すのが苦手な人」といったイメージに直結します。特に、ぼそぼそと口ごもるような話し方をする人はそれだけで面接落ちしてしまう可能性もあります。普段よりも大きな声を出すこと、声の張りに注意をするようにしましょう。
第一声は特に意識して声を出す
話す時の声の大きさというのは、普段からの癖のようなものですから、意識しないとなかなか変えられません。少し気を緩めると普段の小さな声に戻ってしまうこともあるでしょう。
こういう人におススメなのは「第一声は特に大きな声を出す」という方法です。会場で最初に出す声をことさらに意識して大きな声を出すのです。「失礼します!」「よろしくお願いします!」といった挨拶の段階で大きな声を出しておけば、自分自身がそれに引きずられてその後も比較的大きな声で話すことができます。
また、人は第一印象によってその後の評価を左右してしまう傾向があるので、第一声で大きな声を出して「元気な人だ」という印象を与えられれば、その後多少声が小さくなってしまったとしても、「元気のない人だな」という印象には簡単に変わりません。もちろん、ずっとしっかりとした声で話すのが一番なのですけどね。
語尾が尻すぼみにならないことに気を付ける
しっかりとした声で回答していても、回答の最後で声が小さくなると、回答内容全体に対して自信がない、責任を持てない、といったメッセージを伝えてしまうことになります。うまく回答できなくても、多少話のつじつまが合わなくなって焦ったとしても、必ず「です」「ます」といった語尾のところまではっきりと発声して回答するようにしましょう。
不利な状況ほど声を出す
回答に対して深堀りされてうまく答えられなかったり、あまり聞かれたくない内容を質問されたりすると、気持ちが萎縮して自ずと声が小さくなってしまいがちです。しかし、そのような場面で声が小さくなると、状況は悪化するだけです。不利な状況に小さな声で答えると「つじつまが合わないことを言っています」「うまく答えられません」と委縮していることを相手に伝えるだけです。
また、緊張で回答がうまく言えず、頭が白くなって言い直しをさせてもらう時など、「すみません、言い直させてください」などといって言い直すことは構いません。しかし、このような時に申し訳なさそうに見せるために小さな声でエクスキューズを出すことは良くありません。
このような状況の下では、特に意識して大きな声でハキハキと答えましょう。「謝る時こそ元気よく」というのが、しっかりした人物である印象を与えます。
姿勢が悪い
椅子に座ったときに姿勢が悪くなる人は良く注意しましょう。猫背になってうつむきがちな姿勢になるのは「人と接するのが苦手で弱気な人」というイメージを与えます。
一方、背もたれに寄りかかると、あまり良い態度に見えません。背もたれは使わず、きちんと背筋を伸ばして話すのが大切です。
本来、姿勢なんで気にする必要はないことだと個人的には思うのですが、評価側の心理に影響してしまうのは確かですから、少し気を付ければ良いことは気を付けておきましょう。
リアクションが悪い
面接は会話を通じて行う選考です。ですから、緊張している状況であっても、ある程度自然なリアクションがあることによって面接官の評価は高まり、予想するリアクションがないと面接官は不審に思います。職場に入れても、うまくコミュニケーションが取れないかもしれないという懸念につながるのです。
たとえば、面接の導入で「緊張していますか」と聞かれたとき、そっけなく「はい」と答えるだけだと面接官は「ん?」と思うかもしれません。誰が考えても「緊張していますか」という質問は、選考そのものとは関係のない導入的な語りかけです。応募者の緊張している心情に配慮してリラックスさせるために発している言葉であるかもしれません。
このような問いに、少し笑顔で「はい、とても緊張しています」と答えれば、面接官は自然なリアクションだと感じるでしょう。
あるいは話の流れの中で、面接官が笑いながら「〜ということですね」と言ってくるようなときは「あ、はい!そうです(笑)」のようなリアクションになるのが自然な反応でしょう。相手が笑顔で接してきたら笑顔を返すのが自然なリアクションですが、そういうことが普段から苦手な人は意識をしておく必要があります。
無駄な言葉が多い
たとえば、「えー」とか「あのー」とかいう、間をつなぐ言葉を多用すると聞きづらくなります。絶対にダメというわけではなく、何度も繰り返しこれらを発すると、面接官が回答を聞くことに疲れ印象は悪くなります。
また、回答の冒頭に面接官の発した質問を繰り返す、というのも良くありません。実は、他の就職アドバイスのサイトで「質問を繰り返すと良い」なと書いてあるのを見つけたのですが、私はこれを絶対に推奨はしません。
「あなたが弊社を志望している動機はなんですか」という質問に「私が御社を志望している動機は~」と答えたり、「あなたが学生時代に力を入れたことはなんですか」という質問に「私が学生時代に力を入れたことは~」と答えるのは決して良いとは思いません。自分の発した質問をオウム返しされても、面接官にとってはそれを聞かされる意味がありません。その質問は既に共有されている事実ですから、再度確認する必要はまったくないのです。限られた時間の中で、本題に入る前の前置きが長いことに良い印象を抱く面接官はいません。
ですから、「あなたが弊社を志望している動機はなんですか」と問われたら「〜だからです」と端的に結論を冒頭に述べます。「あなたが学生時代に力を入れたことはなんですか」という質問には「○○サークルにおける○○です」と端的に結論を冒頭に述べます。前置きは不要です。すぐに答えを出すことが、要領の良い人、スムーズなコミュニケーションを取れる人といった印象につながります。
同じことを繰り返すのではなく課題を明確にしよう
面接落ちを繰り返すのはしんどいことですね。何十社も受けてすべて不合格だと、自分の人格まで否定されているような気持ちになるのは無理もないことだと思います。
しかし、まず面接は人格を評価できるものではないことを理解しましょう。また、採用担当者もただの普通の人たちだということも。就活というゲームの中では、採用側が主導権を握っているという現実があり、採用側がルールを決めているという状況なので、「素」がルールにうまく適合していない人は評価されにくいというだけなのです。
まず、このルールでまわっているこのゲームに参加し続けるのか覚悟を決めましょう。そして、「募集職種にマッチしているかどうか」という限定された判断のために構成されているゲームのルールを理解しましょう。そして、ゲームのテーブルにつくのであれば、割り切ってルールにマッチする振る舞いや回答を心がけましょう。ご自身の面接がこのルールに適合していない部分はどこなのかを見極め、そこを改善していくのです。
この見極めは、頭の中で過去の面接を反芻しているだけだと難しいところもあるでしょう。自分が面接でどのように回答しているのか、たとえば家でひとりでシミュレーションしてみてそれを録画して見てみるというのもひとつの方法です。自分が採用側にいると思って映像を見ていると、「うーん」と思うことが見つかるでしょう。もし、あなたの面接がこのゲームのルールにマッチしていないのであれば、同じことを何度繰り返しても結果は同じかもしれません。しかし、その齟齬を理解して対策をすれば、このトンネルをすぐに抜け出せる可能性も十分あります。
やってみましょう。
おすすめなのは、きちんとした基準を持った、採用側の意識も理解した第三者にご自身の面接を見てもらうことです。もちろん、弊社の面接対策をご利用いただけば、課題を洗い出し、就活・転職・公務員試験で求められる人材にマッチするように対策をします(たとえばこちら → メンレンV・模擬面接サービス(テレビ電話使用) )。
早稲田大学法学部卒業。大手資格就職予備校にて法律科目およびESシート作成・面接指導専任講師として約13年勤務。大学でのセミナー実施多数。面接指導担当者の研修にも従事。民間企業で人事採用面接を7年間担当。面接が苦手な方にも寄り添う指導で対応力を引き上げます。