面接で悩んだら3つの観点からチェックしてみよう

講師として面接対策に携わっていると、「面接に自信がないんです」という人と多く接します。もちろん、自信満々であれば対策サービスなど不要でしょうから、面接に不安を感じている人が多いのは当然でしょう。

ただ、「面接に自信がない」という場合、実際にはその内容はさまざまです。しかし、「面接が不安だ」、「なんとかしなければいけない」といった漠然とした気持ちを抱えているということは多いものです。

この状態のままだと、なかなか前に進むことはできません。「面接に自信がない」という状態から脱却するためには、「何が不足しているのか」を見つけ出し、明確な課題意識を持って対策に取り組む必要があります。

もちろん、弊社の摸擬面接サービスをご利用頂ければ、1回の摸擬面接で必ず課題はわかります。対策して改善するまでのすべてを1回で済ませられるとは言いませんが、少なくとも何が問題なのかは把握できるのです。

そこで今回は、漠然と「面接に自信がない」と感じている人は、課題を発見するためにどのような観点でご自身の面接をチェックするべきなのか、説明していこうと思います。弊社の摸擬面接でチェックする視点は多数ありますが、今回は大きな枠組みを捉えて頂くために、「3つの観点」で話を進めていこうと思います。

面接の自己チェックは、3つの観点、「表現・熱意・能力」で行う

面接の結果は評価者が行う評価によって決まるので、厳密なチェックをしていく上では、評価基準が問題になります。評価基準は採用者によって異なりますが、実際の評価は多くの項目に分かれています。ただ、大まかに言えば、次の3つに集約されます。

1つ目は、応募者から受ける人物の印象です。どのような印象の人物が良いのかは採用者によって異なるものの、少なくとも「悪い印象」はだいたい共通しています。この印象を左右しているのは、面接を受ける人が自分をどのように「表現」しているのかに左右されます。

2つ目は、仕事に対して前向きに取り組む姿勢があるかどうかです。簡単に言えばやる気があるかどうかです。また、そう簡単には退職せず、その組織に長期間貢献する気があるかどうかということです。このような「熱意」を確認したいと採用者は考えています。

3つ目は、職務をうまくこなし、成果を出すことができるかどうかです。期待されている職務を十分にこなす力があり、職務遂行に必要な他者とのコミュニケーションを取ることができ、あるいは、周囲に好影響を与えることができるかどうかです。これにはいわゆる「スキル」と呼ばれるものが含まれますが、その他にも、人間関係を築く力とか、顧客と距離を縮める力とか、仲間や後輩を盛り立てる力のようなものも含まれます。これらをまとめて「能力」と呼ぶことにします。

これらの3つについて、1つずつ見ていきましょう。

求められる人材像にふさわしい「表現」になっているか

採用側は求める人材について、一定のイメージを持っています。たとえば、「明るい人」がいいな、「元気のある人」がいいなといった単純なものから、予定しているポジションから「他の社員に対して説得力ある話し方ができる人」とか、「冷静でロジカルな考え方ができる人」といったイメージまでさまざまです。

一部の例外はありますが、一般的には「明るい人」の方が「暗い人」よりは好まれますし、「元気のある人」の方が「覇気がない人」よりも好まれます。また、話し方が「情緒的すぎる人」、「主観的な思い込みだけで話す人」よりも、「論理的に話す人」の方が好まれます。これらをどれくらい重視するのかは、その組織や職種、ポジションなどによって異なりますが、どの組織でも評価される傾向というのはあるわけです。

これらの人格的傾向は、もちろん回答の内容からも推測されますが、面接で最も影響を与えるのは「立ち居振る舞い」、「表情」、「話し方」などの「表現」です。

この「表現」は、「素」の状態での差が大きく、そのため面接の場でも大きく差が出ます。しかも、客観的な自己評価が出来ていないことが多いのです。「ちょっといつもより元気にやろうかな」ぐらいのことは多くの人が思いますが、日頃の自分の話し方を「大幅に変えなければならない」と考える人は少なく、「素」の延長線上で面接に臨んでいる場合が多々あります。

しかし、この「表現」がプラスに作用するか、マイナスに作用するかは、実は評価者の評点に大きく影響します。面接冒頭で目にした「表現」によってバイアスが生じ、その後の回答に対して多大な影響を与える場合は少なくありません。あくまで私の経験則上のことですが、面接における評価の4割程度をこの「表現」が左右しているという印象です。

したがって、まずはこの「表現」において、ご自身が採用者の描く人物像に沿っているのかどうかについて、チェックしてみましょう。これについては、下記の過去記事などが参考になると思います。

過去記事: 面接でありがちな印象の悪い話し方19選

主観的な「熱意」を客観情報で伝える

面接で、「やる気があるところを見せなければならない」、「仕事に前向きな姿勢を伝える必要がある」といったことは、ネットの情報などでも良く見ると思います。もちろん、採用側がやる気のない人よりやる気のある人を採りたいのは当然ですから、「熱意」を伝えるのは必須だと考えるべきです。

ただ、「熱意を伝えよう」と言うと、「一生懸命がんばります!」とか「やる気は誰にも負けません!」といった言葉を元気良くいえば良いのかというと、そういうわけではありません。大人が職場を選択をする際に表現する「熱意」なのですから、もう少し中身のあることを伝えなければなりません。単なる「お気持ち表明」で「熱意」が伝わるわけではないのです。

「熱意」は未来の話

面接での質問は大きく分けると「未来」の話と「過去」の話に分かれます。「未来」の話は、採用先で待っている仕事がどんなものだと理解しているのか、そこで得られる自分にとってのメリットは何なのか、具体的に何をやりたいと考えているのか、といった事柄です。

これらは、「志望動機」や「転職理由」、「採用組織の取組で何に関心があるか」、「具体的にやってみたい仕事」や「キャリアプラン」といった質問で話すことになります。これらの質問は、あなた自身の「WILL」、つまり「あなたはどうしたいのか」ということと結びついているものです。

気持ちだけで「熱意」は伝わらない

「採用組織に何を期待して応募しているのか」、「具体的に何をやりたいのか」、「仕事を通じて何を実現したいのか」といった「WILL」を尋ねられ、全く答えられない人は少ないと思います。何がしか、やろうという「気持ち」はあるはずですから、一定の答えはできます。しかし、そのような単なる「気持ち」は応募者全員が持っているものです。誰もが持っているものを見せてもほとんど意味はありません。また、声高に決意表明をしたところで、採用側からすれば信憑性がありません。その場限りでどうとでも言えることです。

大切なことは「具体的に考えていること」を伝えることです。「採用組織の取組を具体的に把握」しており、その組織で「何ができそうなのかを具体的に想定」しており、自分が「どのように働くのかを具体的にイメージ」しており、一定の「具体的スパンで自分が出す成果目標」を明示できること、これが「熱意」を示すということです。

採用先のことをしっかりと調査し、きちんと理解し、自分の働き方をイメージし、具体的な成果目標を持っていることこそが、「熱意」を伝えることになります。

「仕事は採用側が準備しているものだから…」などと考えて、未来について漠然としたイメージしか持たずに面接に臨めば、どんなに「やる気があります!」と強調しても熱意を信じてもらうことはできません。未来に対する「決意」は主観的なものだからこそ、客観情報を基礎にした具体的な絵を描いているかどうかが勝負なのです。

「能力」は過去の具体的行動で証明する

職務を順調に遂行する能力を持っていること(あるいはそのポテンシャルがあること)は、採用者からすれば必須の要件です。これに関する評価の大半は、書類選考で行われています。提出書類から学歴や職務経験などを確認することで、最低限のスキルマッチはあるということを確認した上で、面接選考に呼ぶというのが一般的です。

しかし、書面上では表現されないような人間関係で発揮されるような能力、あるいは他の応募者とのスキルの比較を確認する上では、やはり面接での質問への回答も重要になってきます。

過去の話が「能力」を表現する

「能力」を表現するのは「過去」の経験です。

大学で何を専攻していたのか、大学院で何を研究していたのかといった学業に関する経歴も、能力を判断する上では有力な情報となります。それ以上に重要なのは職務経験です。応募職種と共通するような職種の経験、あるいは共通していなくても流用できそうな職務経験はスキルの判断に大きく役立ちます。そして、書面だけではわからない情報を得ようと質問がなされるわけです。

過去の経験を話すことで、私にはできるということ、つまり「CAN」を表現することが回答の目的です。また、単にできるというだけでなく、どの程度のレベルでできるのかをアピールすることも大切です。

コンピテンシーを表現するように意識する

例えば、職務で課題に直面し、対策を立て、解決のために行動したという経験を話すとき、大切なことは「コンピテンシー」を表現することを意識することです。「コンピテンシー」とは、ある職務や役割において高い成果を上げ続ける者が共通して持っている行動の特性を指します。少し乱暴な説明をすると、「高い成果を上げる人にはある共通した能力が備わっており、課題に対応した有効な思考パターンがあり、解決にこぎつけるためのプロセスで共通した行動の仕方がある」といった感じでしょうか。

たとえば、客観的に確認できる「資格」とか「実力レベル」は履歴書等に記載されていることがほとんどですが、これらの力をどのような考えの下でどう行動して発揮したのかという「行動特性」の説明に重点を置くことが大切です。面接者からすれば、書類を確認すればわかる能力を言葉で聞くだけでは意味がありません。その能力をどう発揮したのか、プロセスを具体的な行動で説明することが大切なのです。

この「プロセスを具体的な行動で説明する」ことが出来ていない人は非常に多いのが現実です。

これについては、下記の記事が参考になるでしょう。

過去記事:面接では考え方や理由よりも具体的な行為・行動を話そう
過去記事:面接で語るべきは「結果」ではなく「プロセス」「行動」
過去記事:面接での回答では定量的な説明を心がける。

不足している能力を埋めるものは何か

採用側が求めている能力に対して、少し不足があることが懸念されるような場合もあるでしょう。このような場合に、漫然と客観的な能力だけを伝えても道は開けません。不足している能力を埋めることができる「高い可能性」を自ら提示する必要があります。

これは「未来」の話をしているように見えますが、実は「過去」によって説得する場面です。過去に成長したプロセスを示したり、現在まで続けている職務や努力の工程の中に、不足スキルを埋める学びがあるといったことを主張するのです。書類を見た上で面接に呼ばれているのですから、採用側は能力の不足を知った上で選考をしているのです。つまり、面接の中でこの不足部分を埋めることができるという期待や安心を与えなければなりません。それを主張するのは、「気持ち」ではなく「過去の事実」なのです。

対策に注力すべきなのは、表現・熱意・能力のどれなのか

今日は、面接がうまくいかないなあと悩んだ時に、3つの観点からご自身の面接を振り返ってみましょうという話をしました。細かいことは色々ありますが、先ず大まかに、どこに大きな課題があるのか、大づかみに理解することは意味があります。

1つ目の「表現」に問題があるのであれば、対策は簡単です。第三者に自分の回答の様子を見てもらって評価してもらうことです。私のような面接講師が良いとは思いますが、友人や家族でも意味はあります。自分がどう見えるかを確認して問題があるのであれば、改める練習をすれば良いのです。ただ、特にこの点に苦手意識のある人も少なくありませんので、「すれば良い」と言われても難しい場合はあるでしょう。それでも、必ず改善できる方法はあります。もし、自分だけで対策するのが難しければ、模擬面接を一度受けてみてください。

2つ目の「熱意」については、「調べる」ことが大切です。企業であれば、その事業や近時の取組、上場企業であれば決算短信などの情報源や経営戦略文書などを見て情報をインプットすることが大切です。公務員であれば、自治体やその機関の掲げている政策や行っている事業、その自治体の現状や課題などのインプットです。インプットすれば自ずと「自分は何をしたいのか」、「何ができるのか」のイメージが膨らんでいくと思います。これが「熱意」の表現になっていくのです。

3つ目の「能力」については、経験の棚卸が大切です。また「アピールする能力」と「経験」をどう組み合わせるのか、また経験を「具体的な行動」で説明する組み立てを考えておくことが大切です。面接時間は限られていますので、具体的な話を効率よく話す準備はしておく必要がありますね。

ざっくりとした「3つの観点」をご案内しましたが、より詳細にご自身の課題や改善策を知りたい場合は、是非弊社のサービスを利用してみてください。